3月11日、福島県に「自主避難者の応急仮設住宅からの退去の強制執行」の撤回を求める緊急オンライン署名がスタート。署名はー>こちらから
強制執行を受けた自主避難者本人の陳述書ー>こちら
東京地裁の執行官が避難者に渡した催告書(24.3.8)
福島県のこの強制執行の申立はもはや避難者を見捨てる(棄民扱い)のではなく、迫害している。しかも、迫害しているのは本来、県民を守るためにのみ存在することが認められる公的な組織。それは避難者の生存権に対する恥ずべき侵略行為ではないだろうか。
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裁判の最中に建物明渡しの強制執行の申立に出た福島県に抗議する
2024年3月8日
「避難者追出し裁判」被告ら弁護団
(2021年5月14日、福島地裁の避難者追出し裁判第1回期日)
1、私たちは、福島県が福島原発事故で福島から東京の国家公務員宿舎(応急仮設住宅)に避難した避難者を被告として、その宿舎から退去することを求めて提訴した「避難者追出し裁判」の被告らの弁護団です。
本日、東京地方裁判所の6名の執行官が、被告が避難する国家公務員宿舎を訪れ、福島県が建物明渡しの強制執行の申立をしたから1ヶ月以内に荷物をまとめてここから出て行くようにと命じて、別紙の催告書(ー>PDF)を置いていきました。
2、しかし、「避難者追出し裁判」は終わっていません。被告らは、今年1月15日に言い渡された二審の仙台高裁の判決は国際人権法が避難者に認める居住権を無視するという誤りをおかしたもので破棄されるべきだと主張して、最高裁に上告しました。昨年10月25日、最高裁は国際人権法の動向を踏まえて、性別変更のための手術要件の法律は違憲であると全員一致で、二審の高裁判決を破棄しました。国際人権法の動向=世界の良識に敏感な今日の最高裁は「避難者追出し裁判」の高裁判決を破棄するかもしれないのです。
3、にもかかわらず、福島県は、最高裁の判決を待たずに、仙台高裁判決の中に建物の明渡しを仮に執行できるという仮執行宣言(※1)があるのをもっけの幸いにして、強制執行の申立に及んだものです。これは以下の理由から断じて許すことができません。
(1)、本来、強制執行は判決が確定し裁判が終わったのちに初めて着手できるのが原則です。しかし、事案によっては判決の確定を待っていたのでは被告に財産を持ち逃げされる等で強制執行が空振りになるおそれがある場合には権利者を救済するために例外的に仮の強制執行が認められます。これが判決に仮執行宣言をつけることです。しかし、本件では「判決の確定を待っていたのでは明渡しの強制執行が空振りになるおそれ」などなく、仮執行宣言を強行しなければならない合理的な理由は一つもありません。
(2)、なおかつ、一昨年9月に来日したダマリー国連特別報告者(※2)は調査を終えて離日する直前に、この裁判に対し「賛成できない。避難者への人権侵害になりかねない」と国連特別報告者としては異例の厳しい警告を発しました。このように、この裁判は世界の良識がまゆをひそめるいわくつきの裁判です。裁判審理中での今回の強制執行の申立は、国際人権法が認める避難者の人権(居住権)に対する新たな人権侵害行為と言わざるを得ないからです。
4、避難者に対する住宅支援が打ち切られ、応急仮設住宅から転居できる条件のある人たちは転居しました。残っている人たちは、収入、仕事、体調、家族状況等から直ぐには転居できない人たちです。被告も、今すぐ転居する具体的な条件はなく、強制執行を強行されたのでは、寒空の下、戸外に追いだされ、たちまち路頭に迷うことになります。
5、だからといって、私たちは裁判の中で、避難者に未来永劫に応急仮設住宅の居住権を保障すべきだと主張している訳ではありません。あくまでも避難者を人間として扱ってほしい、人間として保障される人権(居住権)を尊重して欲しいと訴えているだけです。人権である以上、それは自分だけでなく全ての人の人権が尊重される必要があり、その結果、人権の「共存」が必要となります。その「共存」のあり方を示したのが国際人権法が保障する「居住権」です。それは「代替措置の誠実な提供」があれば明渡しを求めることができるというふうに人権の「共存」の折り合いをつけたからです。本件も本来ならこのようにすべきなのです。つまり、福島県は被告の現状を真摯にヒアリングして、どうしたら「代替措置の誠実な提供」が可能かを具体的に誠実に取り組むべきだったのです。しかし、福島県は今日に至るまで一切それをせずに、事前に、被告に強制執行の一報の連絡すらなく、いきなり問答無用とばかりに強制執行を申し立てたのです。これが、常々、県民に寄り添い、県民の復興を最大限支援するといった福島県の日頃のうたい文句とは間逆な振舞いであることは小学生でも分かる道理です。
6、国際人権法という世界の良識に照らせば、今回、福島県はまた1つ、重大な人権侵害をおかしました。今回の強硬措置の違法性は明らかです。福島県はただちにこの違法行為を撤回し、被告に謝罪し、上記に述べた人権の「共存」を実現するために、被告との間で真摯なヒアリングと「代替措置の誠実な提供」に向けての誠実な取り組みを開始すべきです。それが人権国家の名に相応しい行政の姿であると確信します。
7、にもかかわらず、不幸にして福島県がそれをしない場合には、今年4年ぶりに開かれる、日本政府が行っている人権侵害問題を世界で審査する国連人権理事会のUPR(普遍的定期審査)の場において、日本政府は、かつて世界からの警告にも関わらずアパルトヘイト政策を続けた南アフリカ政府と同様、国連特別報告者からの人権侵害の警告にも関わらずこれを無視して人権侵害を重ねるならず者国家として非難されるでしょう。それは、昨秋、NY国連本部で《我々は、人間の命、尊厳が最も重要であるとの原点に立ち返るべきです。我々が目指すべきは、脆弱な人々も安全・安心に住める世界、すなわち「人間の尊厳」が守られる世界なのです》と国際人権法に合わせて「脆弱な人々も安全・安心に住める世界」と「人間の尊厳」の重要性を高らかに訴えた岸田首相の顔にならず者という泥を塗ることになるのです。
8、私たちは、福島県に対し、直ちに本件強制執行の申立を取り下げることを求めます。
(※1)仮執行宣言付きの判決
判決文の中に、判決確定前であってもその判決に基づいて、仮に強制執行をすることができる旨の宣言がつけられたものをいう。この判決で、仮の強制執行を申立てるかどうかは権利者(本件の福島県)の自由である。
(※2)ダマリー国連特別報告者
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