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2019年7月12日金曜日

【第4話】 【NOでは足りない、つつましいYESの提案】みんなで作る「日本各地の自治体レベルで、子どもたちの甲状腺検査」プロジェクトに参加しませんか(2019.7.12)

自治体レベルの子どもたちの甲状腺検査プロジェクトに賛同する市民とその声は->こちらで紹介。自分も賛同したいという方はこちらの投稿の「コメント」欄か、tonke*song-deborah.com(*を@に変更)まで賛同メッセージをお寄せ下さい。

                                     柳原敏夫(市民が育てる「チェルノブイリ法」日本版の会・法律家)
こんなアイデアが浮かびました。

わたしたちのまちの子どもたちの健康を守ることが、
福島の子どもたちの健康を守ることになり、
未来のわたしたちのまちの子どもたちの健康を守ることになる。
それが、市民みんなの手で作る「わたしたちのまちの子どもの甲状腺検査」

それが311後の市民型公共事業のカタチ。

  ***************

1、今週8日に開催された福島県の「県民健康調査」検討委員会は、委員会内に設置した評価部会が先月3日に公表した「甲状腺がんと被ばくとの関連は認められない」とする報告を検討しましたが、委員から異論が相次ぎ、修正は「座長一任」という座長案も却下、委員の中で意見を集約して7月末までに修正することになりました。
ところで、「甲状腺がんと被ばくとの関連は認められない」とするこの報告書の正しい中身は「依然、被ばくと甲状腺がんの関連は不明である」です(その詳細は->こちらを参照)。しかし、市民が統計学・疫学の素人であるため、この中身はチョロまかされ、統計不正の報告がまかり通っています。

ただし、重要なことは、私たちは、今から統計学・疫学の専門的な勉強をして、報告書の統計不正を理解する必要はないことです。なぜなら、報告書よりもっと端的に、「被ばくと甲状腺がんの関連」を確認する方法があり、それさえ実行すれば、この問題が誰の目にも分かるように決着がつくからです。
だから、私たちはズバリこの方法に目を向けるべきです。

それが 「わたしたちのまちの子どもの甲状腺検査」です。
とりわけ福島県の「被ばくと甲状腺がんの関連」においては、福島原発事故による汚染の影響が殆どなかった自治体でおこなう「子どもの甲状腺検査」です。
なぜ、この検査で「被ばくと甲状腺がんの関連」を確認できるのか、というと、それは非汚染地の自治体レベルで実施した検査結果を基準(疫学の言葉では「対照群」)にして、福島の検査結果と対比すれば、福島県の「被ばくと甲状腺がんの関連」がずっと容易に証明できるからです。

半世紀以上前、世界を揺るがした薬害事件「サリドマイド問題」で、西ドイツのレンツ博士は、サリドマイド剤を服用したか否かを聞き取り調査し、データを集めて、症例群と対照群のオッズ比は380.5となり、95%信頼区間の推定(87.5~1653.4)によって、明白に、サリドマイド剤服用と奇形児出産の関連ありと認められました。
これを参考にして対比するのであれば、汚染地の汚染度の高い地域と低い地域を対比するのではなく、ズバリ、汚染地と非汚染地を対比すべきなのです(その詳細は->もっとずっと単純明快な比較でズカッと証明が引き出せるのになぜ、やらないのか)。

そして、政府がこの検査をやらないのは周知の通りです。311以後、彼らは国民の命、健康を守る責任を赤裸々に放棄しました。けれども、これは新しい出来事でもなく、別に驚くことでもありません。日本史上、富国強兵、高度経済成長のためには、公害の発生はやむを得ないとされ、国民の命、健康は一貫して犠牲にされてきたからです。そして、損なわれた国民の命、健康を回復したのは、ほかならぬ国民自身の声、行動によるものでした。国民自身が声をあげ、行動を起こさない限り、国民の命、健康を守ることは不可能--これが歴史の変わらぬ教えです。

ですから、今回も、その歴史の教えに従って、私たちの子どもたちと福島の子どもたちの命、健康を守るために、私たち自身の手で、「わたしたちのまちの子どもの甲状腺検査」を実施しようというものです。
これが、
わたしたちのまちの子どもたちの健康を守ることが、
福島の子どもたちの健康を守ることになる、です。

2、同時にそれは、今後、起き得る原発事故のあと自治体レベルで甲状腺検査が実施された時、自分たちの子どもたちの健康を守るためです。

なぜ、これが将来の原発事故に備えて、子どもたちの健康を守るためになるのか。その訳は、上記の通り、先月3日に福島県の評価部会は「甲状腺がんと被ばくとの関連は認められない」という報告を公表し、今週、その報告は検討委員会に提出され、この報告を絶賛する委員とこれに異議を唱える委員の間で論争になりました。
ここでハッキリしたことは、通常、百万人に数名の小児甲状腺がんが事故後、福島に異常に多発しても、それは検査(スクリーニング)したからで、被ばくが原因ではないと、「なかったこと」にさせられてしまい、苦しみの中にいる人々は救済されないという政策・政治を目の当たりにしたことです。
これは福島原発事故の汚染地の人々の運命ばかりか、再稼動がスタートし、或いは再稼動に向かっている原発で起きる可能性がある未来の原発事故で汚染地となる(その範囲が果たしてどこまで及ぶのか予測もつきません)人々の運命のことを意味しています。

この残忍酷薄な政策・政治は、放射能の危険と向き合っている人たちの心に、「なかったことにするなんておかしい!」という不信、疑惑を湧きあがらせているはずです。
けれど、このままでは「おかしい!」という思いだけで終ってしまいます。
私たちは、「おかしい!」という思いをカタチにする必要があります。それも、単に、NO!と言うのでは足りず、YESを積極的に作り出していく必要があります。
それが、将来の原発事故に備えて、今、日本各地の自治体レベルで、子どもたちの甲状腺検査を実施することです。
これを実施すれば、検査(スクリーニング)したからといって、小児甲状腺がんの手術が必要な子どもたちが多くいないことがきっと証明されるでしょう。
現に、 「関東子ども健康調査支援基金」の基金ニュース(2017.12.1)によれば、のべ7627人が甲状腺検査を受診した中で、手術が必要な悪性の甲状腺がんと判定された子どもはゼロでした。

このような証拠を握っていれば、将来、たとえ原発事故が発生して、自治体レベルで、子どもたちの甲状腺検査を実施することになったとしても、今の福島のように「多発する小児甲状腺がんの原因は検査(スクリーニング)したからだ」という茶番を言わせないこと、スクリーニングを理由にした残忍酷薄な政策・政治を取らせないことができるからです。

3、他方で、このアイデアに対し、
「確かに言われることは結構。だが、自分たちの市町村で、果たして、約27万人が受診した福島県の甲状腺検査に匹敵するだけのスケールの検査が実施できるのだろうか。データ数が少なすぎて、福島の検査結果と対比しても意味がないんじゃないか」
と、不安を覚える人がいるかもしれません。  
 一般論としては、こうしたデータは数がものをいいます。しかし、今回、福島県が実施したデータ解析の方法はオッズ比と言って、このオッズ比に関する限り、データのサイズは解析の結果に影響がないことが数学的に証明されています(その詳細は->こちら)。
ですから、皆さんが住む市町村の数千人単位の甲状腺検査でも十分意味のあるオッズ比が引き出せます。

4、最後に
 市民立法「チェルノブイリ法」日本版の取組みからみたら、甲状腺検査のアイデアはその一部にすぎず、ごくつつましく、ささやかなものです。
 しかし、いま、福島県が、被ばくによる健康被害は「なかったことにする」、原発事故は「終わったことにする」という残忍酷薄な政策・政治が進行中のこのときに、「単にNO!ではなく、積極的なYESを言う」このアイデアがとても重要だと思い、提案しました。

6 件のコメント:

  1. 自治体レベルで、子どもたちの甲状腺検査を実施(スクリーニング)について、すべての子供が受けられることを望みます。
    それにより、すべての子どもの健康の権利が保障されることと、
    福島県の「被ばくと甲状腺がんの関連」の対比のデータの正確さがはっきりすると思います。佐々木 恵美

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  2. 子どもの健康・いのちを守れない社会は、いずれ必ず崩壊します。すべての自治体が、子どもたちの甲状腺検査を実施するよう、市民が求めれば実現できます。多くの市民が実施を求めるよう、草の根からの運動が必要です。同時に、自治体の議員の方々を運動に巻き込んでいくことも大事です。身近なところから始めましょう。

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  3. チェルノブイリ原発事故のときも、甲状腺がんと事故による被曝の関係が認められるのに時間がかかりました。放射能の健康被害を認めたくない力から子どもたちを守るためにも、被曝地域でないところでの検査との比較が必須だと思います。北川恵以子

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  4. 国の正確な全国調査記録が無く、その比較データを公開できないとなれば、このような国に、子供達の未来を預けるのは、非常によくないと私は常識的に考えますし、このような国を民主主義国家と考える思考の枠組みを考え直す時期が来ているのではないかと思ってしまいます。渡邉伸一郎

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  5. 福島での子どもたちの甲状腺がんが増えていることを、スクリーニングのせいにしないために、他の地域でもスクリーニング調査するというのはとてもいいと思います。その結果、甲状腺がんが増えていることがスクリーニングのせいではないことが明らかになるだろうということとともに、被ばくの問題は福島県に限ったことではないと思うからです。
    市川はるみ(フリーライター/編集者)

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  6. 福島県以外の地域における小児甲状腺がん患者のスクリーニング調査をさらに充実させることに賛成いたします。福島から離れた県はもちろんのこと、隣県である栃木県、茨城県、宮城県、そして千葉県における調査も重要と思いますので、検討頂ければ幸甚です。飽本一裕

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