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2019年7月22日月曜日

【第10話】「なかったことにする」第2弾:「倫理違反も研究不正もなかった」とした東大・医大の調査委員会報告の問題点(4)(【医大編】二重の基準で実施された事実認定)(2019.7.21)

1、調査委員会の調査で行われた認定のダブルスタンダード(二重の基準)
 調査委員会は、「データの提供に同意していない市民のデータを研究に使用した」ことは「非常に問題である」と不同意データの研究使用が大問題だと指摘した

 ところが、その問題の責任は誰にあるのかという論点になると、以下の通りだった。


 通常なら第1に責任が問われるべきである当該研究の研究者について、 研究者が伊達市から市民のデータを提供された際、市民の同意状況がどうであったのかを研究者がどう認識していたのか、そしてどう対応していたのかという肝心な事実関係について、
研究者が提供されたデータの同意状況を確認することまでを求めることはできない
と述べた。なにこれ?!被告発者(宮崎真氏)と共同研究者(早野龍五氏)を呼んで聞き取り調査まで実施していながら、なぜ、この事実関係を認定しようとしなかったのか。

 しかし、例えば札幌医科大学の倫理違反の事例の調査委員会は、この肝心要の事実関係について、研究者及び患者からの聞き取り調査を通じて詳細な事実関係を認定している(報告書7~9頁)

この詳細な事実認定と比較する時、「研究者が提供されたデータの同意状況を確認することまでを求めることはできない」とした医大の調査は自ら、調査委員会は不同意データを使用した論文の倫理違反を調査しないと宣言するにひとしい調査放棄と言わざるを得ない。

 その一方で、「データの提供に同意していない市民のデータを研究に使用した」という非常に重要な問題の責任について、「伊達市による同意情報の管理が不十分であったことに起因するものである」と認定した。

 しかし、調査委員会は、当事者である被告発者(宮崎真氏)と共同研究者(早野龍五氏)を呼んで聞き取り調査をした上でもなお、研究者が伊達市から市民のデータを提供された際、市民の同意状況がどうであったのかを研究者がどう認識していたのか、そしてどう対応していたのかという肝心な事実関係について「確認することまでを求めることはできない」と信じがたいほど極度に慎重な態度を取ったのに対し、
車で40分ほどの近距離にある伊達市に対しては聞き取り調査すら実施せず、単に書面による事実確認にとどまったのに、それだけで、ズバリ「伊達市による同意情報の管理が不十分であった」という事実認定し「(その)ことに起因する」と責任まで認定するという、信じがたいほど極度に大胆不敵な態度を取った。
こんな間逆な認定のスタイルに、これが果して同一の調査委員会によるものか信じられないほどである。

 その上、百歩譲って、たとえ「伊達市による同意情報の管理が不十分であった」という事実が認定され、伊達市の責任が認定されたとしても、だからといって、当該研究の主体である被告発者ら(宮崎真氏・早野龍五氏)に責任がないことが証明されたわけではない。両者の責任は両立するものだからである。

 ところが、調査委員会は、不同意データの使用による研究の問題について、
これは伊達市による同意情報の管理が不十分であったことに起因するものであり、被告発者側に倫理指針に対する重大な違反や過失があったとは認定できない。
とした。つまり伊達市の責任と認定したら、そこから直ちに、当該研究の主体である被告発者側に倫理違反はないと結論を引き出した。これは明らかに論理飛躍である。


2、調査委員会の調査の不適切さ
 研究者の研究に倫理違反、研究不正が認定された場合、通常、当該研究者に何らかの処分、事実上の制裁、社会的制裁などが課せられ、もろもろの不利益が発生する。そのような不利益の発生にかんがみて、調査委員会の調査にあたっては、当該研究者から直接、聞き取りを行い、弁明の機会を保障している。今回の調査委員会も、被告発者(宮崎真氏)のみならず、共同研究者(早野龍五氏)からも直接、聞き取りを行い、弁明の機会を保障したのは彼らの不利益を考慮したからである。

 そうだとすれば、今回の伊達市のように、当該研究者に市民のデータを提供し、当該研究に関わった者が倫理違反の責任を認定された場合、たとえその者に大学から何らかの処分が下されないとしても、伊達市民の信頼喪失をはじめとする様々な社会的制裁を受けることは必至であり、この点で当該研究者に劣らない不利益が発生する。それゆえ、このような不利益の発生にかんがみて、調査委員会の調査にあたっては、当該研究者と同様に、この者からも直接、聞き取りを行い、弁明の機会を保障すべきである。

 しかし、論文の筆頭著者でもなく、また処分の対象でもない共同研究者(早野龍五氏)を東京からわざわざ呼び出して聞き取り調査を行った調査委員会は、車で40分足らずの伊達市から直接話を聞き、弁解の機会を与えなかった。そして、そのまま伊達市に不利益が発生する市の責任を認定した。このアンバランスな聞き取り調査は不適切というほかない。

 調査委員会は、今からでも再調査し、伊達市から直接、聞き取り調査を行い、真相解明にのぞむべきである。

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