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2020年11月8日日曜日

【第57話】コロナ災害が教えたこと、それは311原発事故と同様、私たちの科学技術文明の大敗北だということ(2020.11.7第15回新宿デモスピーチ原稿)

以下は、11月7日(土)に行った、素人市民グループ「脱被ばく実現ネット」主催の第15回新宿デモのスピーチ原稿。

現在の出来事を過去の出来事と比較してみる:15年前の新型病原菌出現の警告
 私たちは、15年前の2005年から、今日のコロナ災害のような、世界規模で健康被害を及ぼす、強力な新型病原菌が出現する可能性が大であると警鐘を鳴らしてきました(禁断の科学裁判)。当時、新潟県上越市で、国が地元市民の反対を押し切って、強力なテクノロジーを用いたの遺伝子組み換えイネの野外実験を強行しようとし、その実験の過程で、最強の新型病原菌(ディフェンシン耐性菌)が出現する可能性があることを、耐性菌の世界的権威である平松啓一順天堂大学教授の「これは決して荒唐無稽な夢物語ではない」と警告する意見書等をもとにし、実験の中止を強く求めたからです。いわば怪物のような科学技術の行使が怪物のような新型生物を生み出す危険性があると警告しました。

しかし、国も遺伝子組み換え技術を推進する研究者たちもこの警告をまもとに取り合わず、無視しました。しかし、 15年後に、最強の新型ウイルスにより世界規模の健康被害が現実のものとなりました。

その上、これは何かに似ています。どこかで聞いたことがあります。
それは、1986年、チェルノブイリ事故が発生した時です。「原発事故は決して荒唐無稽な夢物語ではない」と日本の原発を警告する市民の声が高まりました。しかし、日本政府はこう言って無視した。「日本はソ連とちがい、高度の技術を持っている。チェルノブイリのような事故は絶対起きない」と。しかし、25年後に、日本政府が荒唐無稽な夢物語と無視した原発事故が福島で現実のものとなりました。

さらに、災害発生後の政府の対応もどこか似ています。
福島原発事故に対する政府の三大政策は「情報隠蔽」「事故を小さく見せること」「基準値の引き上げ」。当初、政府は、原発事故は短期間で収束すると言い、人々に年内には自宅に戻れると楽観させましたが、やがてその見通しは崩壊しました。
コロナ災害も、政府らは東京オリンピックを予定通り実施すると言い、短期間で収束する楽観を人々に振りまきました。しかし、今、その見通しは原発事故と同様、崩壊しつつあります。

加えて、今回のコロナ災害で、私の中で初めてハッキリしたことがあります--私たちはコロナウイルスに勝てない、だからコロナから遠ざかるしか、逃げるしかない。これは原発事故とそっくりではないか。私たちは放射能に勝てない、だから放射能から遠ざかるしか、逃げるしかない、と。また、福島で異常に多発している小児甲状腺がんの原因をめぐって、けんけんがくがくの議論や発症数の隠蔽といったことが問題になっている。それはなぜか。その根本的な理由は、我々の現在の科学技術では、被ばくと小児甲状腺がんの因果関係(メカニズム)をズバリ解明する力がないからです。いわんや、被ばくとほかの病気との因果関係についてはなおさら解明する力がありません。つまり、我々が誇る科学技術はコロナにも放射能にも無力だ、どちらについても我々のこれまでの科学技術は無ざんな敗北を喫しているのだということです。
この意味で、福島原発事故と新型コロナウイルスは一直線につながっている。
この意味で、私たちは、311以来ずうっと、同じ敗北、同じ危機の中にある。

だから、私たちは、福島原発事故と新型コロナウイルスによる我々の科学技術文明の決定的な大敗北の中から、二度と、このようなことをくり返さない新らたな科学技術と社会を、私たちの手で作り上げていく必要があり、このことを私たち市民自身が決意する必要があります( 参考:2020年4月28日の大村智氏の発言)。

日本の出来事を世界の出来事と比較してみる(その1):ウクライナがやったこと
だが、311後の現実の日本の政府、日本の社会はどうでしょうか。311後の日本政府と日本社会の正体を浮き彫りにするため、同じ原発事故を経験した国ウクライナと対比してみます。
(1)、旧ソ連崩壊後のウクライナの初代大統領(レオニード・クラフチュク)はこう言いました。
チェルノブイリ事故は、ウクライナにとって宇宙規模の悲劇だ」と。
これに対し、この国の政権担当者はどう言ったでしょうか。
「健康に直ちに影響はない」
「国の定めた基準値以下だから心配ない」
福島の状況は「アンダーコントロール」
経済復興のため、福島の「風評被害の払拭に向けて」全力で取り組む。
恥ずかしくなるほどの何というちがいでしょう。

(2)、ウクライナは原発事故の被害から人々の命、健康を世代を超えて守るため、憲法を改正して、「チェルノブイリ事故から子孫を守ることは国家の義務である」と宣言した(16条)。
これに対し、この国の首相は何をしたでしょうか。
「福島原発事故から子孫を守ることは国家の義務である」などとは一言も口にせず、命を奪う人殺しつまり戦争が堂々とできるように憲法9条を改正することをライフワークに掲げ、その実現に血なまこになりました。
恥ずかしくなるほどの何というちがいでしょう。

(3)、ウクライナは、旧ソ連時代に成立した、国際標準の年1mSvで避難の権利を保障するチェルノブイリ法を旧ソ連崩壊後も、困難な経済状況の中で維持継続、人々の命、健康、暮らしを守ろうとしました。
これに対し、この国の政府は何をしたでしょうか。
他国jの危機である、2012年の欧州の金融危機に直ちに「4.8兆円の拠出」を表明し、ウクライナとは比較にならないほど経済的余裕を示したにもかかわらず、自国の国難である311原発事故に対しチェルノブイリ法日本版の制定を一度も口にしなかった。
恥ずかしくなるほどの何というちがいでしょう。

(4)、ウクライナは、2011年、小児甲状腺がん以外にも実に多くの病気が、とりわけ子どもたちに心筋梗塞や狭心症など心臓や血管の病気の増加が、低線量被ばくにより発症したとする「ウクライナ政府報告書「未来のための安全を発表しました。

              (ウクライナ政府報告書の目次より
第4節 人々の健康に対するチェルノブイリ惨事の複雑な要因の影響
3.4.1 神経精神医学的影響
3.4.2 循環器系疾患
3.4.3 気管支肺系統疾患
3.4.4 消化器系疾患
3.4.5 血液学的影響

これに対し、この国の政府は何をしたでしょうか。
ウクライナ政府報告書に匹敵するような報告書は何ひとつ作成しなかった。やったのは健康被害に関する情報封鎖。小児甲状腺がんの発症数すら経過観察中に発症した数を開き直って封鎖している有様です(経過観察問題)。この徹底した情報封鎖のおかげで、被ばくによりどれくらいの健康被害が発生しているのか、その真実は私たちの前から完全に隠蔽されたままです。
恥ずかしくなるほどの何というちがいでしょう。

これが311後の私たちの社会です。311後の日本はどこに向かっていくのでしょうか。

日本の出来事を世界の出来事と比較してみる(その2)核兵器禁止条約の発効
しかし、日本のことは日本だけでは分かりません。世界と比較してみて初めて見えてくるものがあります。世界では、ここ最近、すごい出来事が起きました。トランプの国の大統領選挙の話ではありません。そんなマイナーな話題ではありません。先ごろ、核兵器禁止条約が世界中で50ヶ国の批准が得られ、正式に発効するという世界史的な出来事です。

この出来事がなぜすごいか。それは、トランプが公言してはばからなかったように、
核兵器を保有するアメリカ、中国、ロシアなどの超大国は世界中の国々に対し「批准をするな」と強烈な圧力をかけたにもかかわらず、50ヶ国が超大国の圧力をはねのけて、条約を批准したからです。では、これらの国々が超大国の圧力をはねのける力はどこにあったのでしょうか。思うにそれは、基本的に、世界中の市民からの圧力以外あり得ません。核兵器の廃絶を願い、求める世界市民のネットワークの力・声が50ヶ国の批准を勝ち取ったのです。

ところで、この条約の発効に対し、マスコミは「批准しない核兵器を保有する超大国に対し拘束力はないから、条約の実効性が乏しい」と指摘します。その通りです。しかし、画期的なことは、
核兵器禁止条約が発効したことで、核兵器の禁止をめぐって国際上の規範が二重状態になったことです。これがなぜ画期的かというと、それまで、国際上の規範は、核拡散防止条約という核兵器保有国優先の規範だけしかなかった一重の状態から、この条約と核兵器保有国の優先を認めない核兵器禁止条約が並存するという拮抗する規範の二重状態がスタートしたことで、しかもこの2つの規範の二重状態を、世界中の市民のネットワークの力が出現させたことです。つまり、私たち市民のネットワークの力が社会のあるべき規範をジワジワと作り出していく原動力であることを示したのです。

核兵器禁止条約の発効が意味することは、311後の世界の特徴は、私たち市民のネットワークの力が社会のあるべき規範をジワジワと作り出していく市民立法の時代だということです。

私たちも、この
核兵器禁止条約の発効という偉業から学び、市民のネットワークの力を育てることの大切さに注目する必要があります。では、どうしたら、この「市民のネットワークの力」を育てられるでしょうか。
そのためには、まず
市民のネットワークの力」を学ぶことです。

学ぶことの根本は「習慣を変えること」
直接民主主義の重要性を訴えたルソーは、学ぶことの根本は「習慣を変えることだ」と言いました。学ぶとは習慣を変えることであり、習慣が変わらなければ本当に学んだとは言えない、と(丸山真男話文集続2.165頁による)。
私は、311で、それまでの習慣が変わりました。一番変わったことが、それまで殆ど行ったことがなかったデモに行くようになったことです。それどころか、仲間と一緒にデモを企画し、実行するようになりました。デモの経験を通じ、市民が心から願っていることを声に出し行動に移すことがどれほど大切なことか、デモが市民のその願いを無条件でかなえる、いかに素晴らしい政治参加のツールであるかを身をもって学びました。それは
市民のネットワークの力」を学ぶ生きた実例でした。その学びをした結果、私は「デモをする習慣に変わった」のです。

「日本の出来事を、日本だけで眺めるのではなく、世界の出来事と比較して眺める習慣に変えること」「現在の出来事を過去の出来事と比較して眺める習慣に変えること」「デモをする習慣に変えること」、これらは私にとって、どんなにささやかで小さな習慣であっても、とても大切な習慣です。
このような習慣を今後とも生涯身に付ける努力を続けていきたい、そして自分ひとりだけでなく、一人でも多くの人たちとこのような習慣を共有できるように取り組んでいきたいと思います。


)ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智氏は、従来の科学技術ではない、予防原則という観点からの新型の科学技術の必要性について、日経のインタビューに次のように答えている(4月28日付日経新聞
――人類の英知で危機は乗り切れますか。
治療薬はいずれできるが、それで感染症の脅威を切り抜けられると考えるのは甘い。‥‥現代人は感染症を避けようと、便利な製品や技術に依存してきた。たとえば除菌剤を多用し、至る所を抗菌処理して安心しきっていた。それが通用しないことが、図らずも明らかになった

――では、どうすればよいと。
薬が必要な状態になる前に、病気の芽を摘めるようにするための科学が重視されるべきだ。そのうえで、感染症の基本に立ち返り一人ひとりが先回りして自ら備えをしておく。北里柴三郎先生が唱えた予防医学の考え方とも一致する」
「特別に難しいことではない。身近なところでは、生活リズムをあらためる。きちんと食事して栄養をとり、体力をつける。体調が悪いのに無理に仕事に出かけることはしない。そんな当たり前のことが大切にされる社会に、少しでも近づくと期待したい


1 件のコメント:

  1. 春木です。(きくちゃんです。)
    市民運動の歌を作りましたが、そのうちのデモ部分を抜粋します。
    (^^♪立ち上がれ!つながりあえ!声をかぎりに叫べ!!
    立ち上がれ!つながりあえ!未来のために、子どものために、世界中に声よ響け(^^♪
    核兵器禁止条約のうたもできました。
    (^^♪どこまでも続く空、そら。どこまでも続く海、うみ。どこまでも続く世界に平和を願うよ。核兵器のない世の中が、あたりまえの世の中になるよきっと、力あわせて。今日も街で呼びかけよう。みんなに署名を呼びかけよう、みんなで署名してみよう。ちいさな力も集まれば、おおきな国も動かせる。それこそ民主主義の力だ。♪

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