以下は、今週11日に、第1回弁論だけで審理終結した避難者追出し裁判の仙台高裁第3民事部に対する控訴人弁護団の抗議文。
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7月10日第1回弁論だけで審理終結した、仙台高裁第3民事部に抗議する
2023年7月11日
令和5年(ネ)第44号建物明渡等請求控訴事件
控訴人弁護団
記
1 福島原発事故の避難者を避難先の国家公務員宿舎から追出そうとする今回の裁判は、この国が過去に経験したことのない福島原発事故に直面して、放射能汚染地から避難した住民の命、健康、暮らしに直結した「住民の人権はどのように守られるべきなのか」が正面から問われた、過去に前例のない人権裁判です。日本政府は311まで、日本に原発事故は起きないという安全神話の中に眠りこけていたため、原発事故避難者の救済に関する法律は何も整備されていなかった。
2 この遅れた状況にあって、原発事故避難者の正しい救済を与える手がかりは、幾度にも及ぶ避難民や国内避難民の悲惨な体験の中から、彼らの救済のあり方を作り上げてきた国際人権法の中にあり、またそれ以外にはなかった。
私たちは、今回の裁判が正しく裁かれるためには、国際人権法の(国内)避難民に関する人権規定に基づいて解決するしかないことを、一審の福島地裁からずっと主張してきた。しかし、福島地裁は、私たちの訴えに全く耳を傾けず、三行半の無内容で理由不備な判決を下した。こうして、福島県の強行する酷薄な避難者追出しにお墨付きを与えた。この意味で、今回の控訴審の裁判こそ、国際人権法による解決が達成さるべき重要な裁判でした。
折りしもこの5月に、原発事故避難民の人権状況を、昨秋来日し調査してきた国連特別報告者ダマリー氏の公式報告書が国連人権理事会に提出され、その中には、この裁判に警鐘を鳴らす記述もあり、いまやこの裁判は、人権に関する世界の良識の最大の関心事となっていました。
3 従って、本来であれば、この控訴審の裁判で、国連関係者も証言台に立ち、十分な時間をとって国際人権法の原則が解明され、本件について正しい裁きがなされるべきものでした。ところが、仙台高等裁判所第3民事部(瀬戸口壯夫裁判長)は、今週10日の第1回弁論期日において、1回だけの、それも30分足らずの短い審理だけで、突如「審理終結」を宣言し、私たち控訴人、代理人、傍聴に詰めかけた支援者の前からさっと逃げ去りました。
4 これはズバリ「裁判の拒絶」であり、憲法が保障した「裁判を受ける権利」の侵害以外の何ものでもない。その結果、一審福島地裁の三行半の判決を正当化し、国際人権法が保障する国内避難民の人権を控訴人に適用することを、キッパリと拒否したのです。
これ以上、国際社会の良識に背を向けた、引きこもり的な態度はありません。
5 私たち控訴人、代理人、支援者一同は、仙台高等裁判所が避難者の「裁判を受ける権利」と「国際人権法が保障する国内避難民の人権」を侵害したという誤りを改め、「審理の終結を撤回し、速やかに弁論を再開し、国際人権法に基づいた徹底的な真相解明を行うこと」を心から強く求めます。
6 いまや、この裁判は単なる国内問題ではなく、世界の良識が注目する国際問題です。
国際問題として、仙台高等裁判所が、原発事故という自身には全く責任の全くない事態によって全てを奪われ避難せざるをえなかった控訴人と福島県民の切なる願いを誠実に受け止めるのかどうかを、その一挙手一投足を国連人権理事会に通報する所存です。
以 上
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