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2022年11月25日金曜日

【第94話】明治以来150年の行政庁の横暴の正当化のロジックに挑戦する子ども脱被ばく裁判 ――万年受験生の負け戦の中で学んだこと――(22.11.24)

 司法試験に毎年落ち万年受験生の肩書を手に入れた私の悩みは「法律ってなんだ?」。だが生憎、私の悩みに答えてくれる書物はなく巷の教えはどれも「くだらないことで悩むんじゃない!」。

20
代の終わり、とうとう同類に出会った。それが「日本の法学の先駆的業績」と評される川島武宜。彼の主著「科学としての法律学」は、法律とは素人に分からない「秘伝奥義的技術」を駆使して、素人をちょろまかすためのものだと喝破。そこから、川島は「秘伝奥義的技術」の法律に代わるものとして「科学としての法律学」の確立を主張した。

川島のこの教えを実行したのが子ども脱被ばく裁判の原告。一審で原告は、被ばくの健康影響について可能な限りの客観的データと科学的考察に基づいて、放射能の危険性を立証しようとした。

半世紀前、公害反対運動に尽力した法学者の戒能通孝は講演でこう言った「明治以来の大学の法学教育のエッセンスは何か?それは、将来、役人や裁判官になる法学生達に『拒絶法学を叩き込むこと』にある。拒絶法学とは何か?それは、市民の要求を蹴っ飛ばす(拒絶する)ための屁理屈のことである。これを教え、身に付けさせて、市民の要求をことごとく退けて、諦めさせる、それが大学の法学教育の目的であった」と。その拒絶法学の金字塔が「行政裁量論」。行政が何をしようが、市民に「違法だ!」と文句を言わせないための殺し文句だから。そしてこの横暴の極みが子ども脱被ばく裁判の一審判決。原告が血のにじむような努力をして、内部被ばく・低線量被ばくなど放射能の危険性を裏付ける事実・データを収集・主張して放射能の危険性を証明しても、判決のゴール手前でこれら珠玉の事実・データはいとも軽々と無視され無残に蹴散らされた。その蹴散らす装置が「行政裁量論」。だから、これは「秘伝奥義的技術」の最高峰を極めた理不尽の極み判決である。

しかし、私たちは福島原発事故の放射能の暴走を認めるわけにはいかないのと同様、一審判決の行政裁量論の暴走も認めるわけにはいかない。そこで、市民の要求を拒絶する「秘伝奥義的技術」の行政裁量論に代わるものとして、「科学としての法律学」として「もう1つの行政裁量論」を提示し、行政裁量論が暴走したくてもできないような、市民の願いを受け止める枠組み作りを目指している。これこそ真の復興である。

2022年10月26日水曜日

【第93話】弁論分離で残った子ども脱被ばく裁判(親子裁判)の最終戦、山下発言を全面擁護する福島県準備書面に対し全面反論した準備書面を提出(22.10.24)

 犯罪という猛烈な執念に対抗する術として、証言することへの執念のほか、この世に何があるだろうか。                          
            アルベール・カミュ「正義と犯罪」(チェルトコフ「チェルノブイリの犯罪」(上)21頁より)

表題の「山下発言を全面擁護する福島県準備書面に対し全面反論した準備書面」の1頁は以下の通り。その全文は->こちら
その書面が反論の対象とした福島県の準備書面(2)は->こちら
その福島県の書面が反論の対象とした控訴人の準備書面(5)は->こちら

 
福島原発事故被災者が国と福島県を訴えた子ども脱被ばく裁判(そのうちの親子裁判)が、二審仙台高裁の前回期日(9月12日)で、この日に審理終結した子ども裁判との弁論分離が認められ、引き続き、審理が続行することになった(次回、控訴人が申請した内堀福島県知事らの証人尋問の可否について決定)。

その結果、当事者の主張について、あと1回主張するチャンスを得、 前回期日の法廷で控訴人が求めた、8月19日に福島県が提出した準備書面(2)に対する控訴人の反論の機会を得た。

この福島県の準備書面(2)は311直後福島入りした山下俊一の山下発言問題について詳細に弁解したものである。この書面が提出されるまでにざっと次の経緯がある。

本年2月、控訴人が提出した原判決の行政裁量論の誤りについて」の準備書面が時間切れのため、冒頭に次のように書いたところ、

本書面は、原判決の行政裁量論の誤りを、体系的、横断的に明らかにしようとしたものである。ただし、個別の論点に関する本書面の記述は、控訴人らが考える行政裁量論の正しい適用の理想からみれば、今なお完成途上の不完全なものである。このため、今後、その完成に向け、必要な補充・追加の主張を行う予定である。

 裁判所から「それなら、その完成版を示して下さい」と促され、次回に完成版として準備書面(5)を提出した。すると、これに対し、福島県が、山下発言問題について全面的に弁解する詳細な書面を提出してきた。それが上記の8月19日付準備書面(2)である。 

これまで、国や福島県は控訴人の詳細な主張に対し、殆ど無視するか、軽くいなすような、要するに木で鼻をくくった態度しか取らなかった。それで十分、あとは裁判所がよろしく、我々を守ってくれると確信していたからである。ところが、今回はちがった。控訴人の山下発言に対する全面的な批判と真っ向から向かい合って、全面対決の反論書面を書いてきたからだ。ここにあるのは詭弁論理学のお手本とも言うべき「山下話法」に対する深刻な危機感のあらわれである。そう理解した控訴人代理人は、ここだけは「ピンチはチャンス」の山下語録に従い、ピンチに立った全面対決の反論書面に倍返しする全面再反論の書面を仕上げ、提出した。

それは、冒頭の小説家カミュの次の言葉に従ったものである。

 犯罪という猛烈な執念に対抗する術として、証言することへの執念のほか、この世に何があるだろうか。                          

実のところ、本書面は完成寸前に少々手間取った。それは最終段階で、弁護団長の井戸さんが、山下俊一が福島入りの直後に、福島県の子ども達に安定ヨウ素剤の服用は必要ないと記者会見で述べた山下発言の誤りをさらに追加したいと粘ったからだ。それが以下の指摘で、この時、井戸さんこそカミュの忠実な弟子=リレー走者だった。

上記山下発言は住民の無知に付け込んだごまかしである。改めて山下発言を再掲すると、「安定ヨウ素剤の服用はその場に24時間滞在すると50mSvを超えると予測される場合になされます。現在の1時間当たり20μSvは極めて少ない線量で,1ヶ月続いた場合でも,人体に取り込まれる量は約1/10のため1ないし2mSvです」というものである。

まず、第1文について、当時の安定ヨウ素剤の投与指標は「小児甲状腺等価線量の予測線量100mSv」だった【甲A第33号証(「原子力施設等の防災対策について」)14711819行目、丙A第1号証(福島県地域防災計画)67頁】。「24時間滞在」などという限定は付されていなかったし、「50mSv」というのも事実ではない。

第2文について、「20μSv/時」は、当時の福島市付近における空間線量であり、外部被ばく線量である。これが1か月続けば、14.mSvになる(20μSv×24時×30日=14400μSv14.4mSv)。その10分の1は、1.44mSvである。すなわち、ここで山下氏は、外部被ばくによる実効線量と内部被ばくによる実効線量が10対1の割合になるという考えに基づく推測値を述べている。しかし、これは過小評価である。チェルノブイリ原発事故においては、外部被ばくによる実効線量と内部被ばくによる実効線量は3対2と評価されたのである(訴状)。しかも、臓器毎の内部被ばくの程度は、取り込む放射線核種や取り込み経路(戸外にいたか、屋内にいたか、運動していたか、食材、飲料水等)によって全く異なるし、内部被ばくによる実効線量から甲状腺等価線量が推測されるものでもない。仮に、内部被ばくのすべてが甲状腺被ばくによるものであれば、実効線量2mSvは、甲状腺等価線量50mSvに相当するのである(甲状腺の組織荷重係数は0.04)(計算式2mSv÷0.0450mSv)。

このように上記山下発言は、根拠の乏しい理屈を積み重ねたものであり、ごまかしであるという外はない。

 

【第92話】追出し裁判で、まともな審理を何一つしないまま審理終結を強行し、10月27日判決言渡しを通告してきた福島地裁に弁論再開を申立て、再考を求めたが本日まで何の対応もなかったので、やむなく担当裁判官に対する忌避の申立に及んだ(2022.10.25)

避難者の住宅追出し裁判で、7月26日、まともな審理を何一つしないまま審理終結を強行した福島地裁は、10月17日に「10月27日午前11時40分に判決言渡し」を通告してきました。

この通告に対して、被告の避難者は、憲法が保障する「裁判を受ける権利」を被告避難者に保障するように、福島地裁に対し弁論再開申立書を提出し、真相解明への取り組みについて再考を求めました(その全文は→こちら)。

しかし、本日25日に裁判所に、この弁論再開申立に対する反応を尋ねたところ、とくにない、という返事をもらったので、この裁判官に憲法が保障する「裁判を受ける権利」を被告避難者に適用することを期待するのは不可能と判断、残された途は裁判官の交代を求めるほかないと考え、やむなく担当裁判官に対する忌避の申立に及びました。

以下、裁判所の受付印が押された忌避申立書の表紙(副本)。

その全文は->こちら


2022年10月24日月曜日

【第91話】追出し裁判で、まともな審理を何一つしないまま審理終結を強行し、10月27日判決言渡しを通告してきた福島地裁に対し、弁論再開申立書を提出(2022.10.21)

避難者の住宅追出し裁判で、7月26日、まともな審理を何一つしないまま審理終結を強行した福島地裁は、10月17日に、「10月27日午前11時40分に判決言渡し」を通告してきました。

この通告に対して、被告の避難者は、憲法が保障する「裁判を受ける権利」を被告の避難者に保障するように、福島地裁に対し弁論再開申立書を提出しました。

その全文は->こちら

その冒頭と末尾を以下に紹介します。

 ******************

1、はじめに

国連人権理事会から任命され、福島原発事故の避難者(国内避難民)の人権状況を調査し、国連人権理事会に報告するセシリア・ヒメネス・ダマリー国連特別報告者が調査のため9月26日から10月7日まで来日し、離日時に共同通信との単独インタビューの中で、福島県が、支援終了後も公務員住宅に住む自主避難者に退去を求めて提訴したこと(まさしく本裁判のことである)に対し、「賛成できない。避難者への人権侵害になりかねない」と警鐘を鳴らした(以下の写真及びインタビューの詳細は別紙参照)。


国連による原発事故避難者の本格的調査は初めてであり、その調査の中で、国内避難民である自主避難者の追出しを求める本裁判についても国連特別報告者により「この提訴には賛成できない。避難者への人権侵害になりかねない」と初めて言及された。その言及は本裁判において、被告らが終始一貫して主張してきた「この提訴は国際人権法が国内避難民に保障する居住の権利を侵害するものであり、許されない」と軌を一にするものである。すなわち被告らの主張は世界の良識に合致していることが示された。

ところで、裁判所は、この間、被告らが原告による人権侵害からの救済を求めて、6つの抗弁の争点整理と6名の証人及び当事者尋問による徹底的な真相解明を訴えてきたにもかかわらず、これをことごとく無視或いは退け、去る7月26日、審理終結を強行した。しかし、このたび、ダマリー国連特別報告者の本裁判に対する重大な懸念の表明に接し、被告らは本裁判が日本の我々にとってのみならず、世界中の人々と良識にとっても失敗することが許されない重大な試練であることを思い知らされた。そこで、本裁判が世界の良識に耐え得るだけのものであることを示すためには、裁判所が世界中からの注目と良識に耳を澄まし、弁論再開を決断し、被告らの「適正、公平な裁判を受ける権利」が保障されるに相応しく、6つの争点整理と6名の尋問による徹底的な真相解明を努めるしかないことを確信するに至った。

そこで、以下の理由の通り、被告らは裁判所に対し、民事訴訟法153条に基づき、口頭弁論の再開がなされることを求めるものである。

 

、結語

以上の通り、被告らからの切なる求めにも関わらず、裁判所が口頭弁論を再開して真相解明のため被告らが申請した証人尋問を実施することをせず、そして原告に対して適正な釈明権を行使せず、被告らの上記抗弁事実に対して原告が認否・反論を拒否し続ける場合には、こうした原告の争点整理のボイコット自身が、国賠法の違法行為に該当するのみならず、こうした事態を引き起こした根本的な原因は、原告の不誠実かつ違法な争点整理のボイコットの是正に積極的に取り組まない裁判所の怠慢さにある。そこで、裁判所がこのボイコットを解決せず、上記抗弁事実について被告らに主張・立証を尽くさせないまま、被告ら申請の証人及び本人尋問の申請を全て却下して審理を終結し判決を出すに至った場合には、「釈明権行使を怠ったことによる審理不尽の違法がある」として当該判決の破棄は必至である。

のみならず、被告らが、この間、こうした争点整理の過程における違法状態の改善是正の必要性を再三強く求めているにも関わらず、裁判所がこれに背を向け続け、争点整理のため原告に釈明権を行使しないことは許されないことであるから、かくなる場合に被告らに残された最後の途は、被告らの「適正、公平な裁判を受ける権利」を回復しその保障を実現するために、裁判官の忌避の申立て及び裁判官に対する国賠請求しかないことを伝え、口頭弁論再開について裁判所の決断を強く要請するものである。

 かつて東京地裁行政部で名を馳せた藤山雅行裁判官は、「法律家の仕事は同時代のみならず歴史的な評価にも耐えうるものでなければならない」と述べた[1]。本裁判はこの言葉が文字通り当てはまる。しかも単なる日本史ではなく、世界史の評価である。冒頭のダマリー国連特別報告者の言葉はそのことを余すところなく示している。本裁判は決して世界史の汚点となってはならないのである。

以 上



[1]藤山雅行編「新・裁判実務大系 第25巻 行政争訟」藤山雅行「はしがき」

2022年9月16日金曜日

【第90話】2年半ぶりに再開した、岡山県赤磐市、8月7日(日)の市民立法「チェルノブイリ法日本版」学習会&帰りに3箇所で意見交換・ミニ学習会

コロナ禍のため中断を余儀なくされていた市民立法「チェルノブイリ法日本版」学習会を、2年半ぶりに、 2022年8月7日、「あかいわエコメッセ」主催で、岡山県赤磐市の赤磐市中央図書館 多目的ホールでやりました。
また、その帰りに、3箇所で行き先の人たちと意見交換をしました(その詳細は後半に)



今回の学習会は、今までなかった新しい出来事が2つありました。
1つは、学習会を企画した方が原田そよさんという赤磐市の議員さんだったこと(原田さんのブログ->こちら)。
もう1つは、学習会に初めて(知らない)国会議員から祝電が届いたこと(ただし、この方は地元岡山一区選出の衆議院議員で、(旧)統一教会とのご縁で一躍メディアで取り上げられ、話題となった人です。どういう意図か不明ですが、とにかく国会議員にも注目されているというのは事実です)。

以下は当日参加し、賛助会員の申込みをされた方からの感想です。
当日は、大変心打たれるお話を拝聴しました。ありがとうございます。
あの後、子供連れのお母さんが新聞記事を食い入るように読んでいらっしゃった姿にも、
何か動き出さざるを得ない気持ちになりました。

しかしながら、遠方でもあり、時間の制限もまだあるので、
些少ではありますが、財政的な支援でお役には立てればと思い、
賛助会員として貴団体に参加させていただきます。

動画
「暗い時代の次に来るもの」(その1)
講師柳原の話

「暗い時代の次に来るもの」(その2)
質疑応答1(ただし、4分弱)


「暗い時代の次に来るもの」(その3)
質疑応答2



プレゼン資料(全文のPDFは->こちら


【帰り道の意見交換】
1、兵庫県加古川市
 8月8日午前、兵庫県加古川市の議員会館で、3人の市議の方とチェルノブイリ法日本版について意見交換をしました。


動画



プレゼン資料1(全文のPDFは->こちら

プレゼン資料2(全文のPDFは->こちら


 2、三重県津市
8月8日午後、三重県津市のアスト津3Fの県民交流センターで、「原発おことわり三重の会」の主に「はまなつめ」担当メンバーとのミニ学習会をしました。

この日、大飯原発差止判決を書いた樋口英明元裁判長が参加されました。私は彼とは研修所で同期で、実は当時、裁判官志望の私は同期の裁判官志望者のネットワークを通じ、裁判官希望者を全員知っていた積りでしたが、唯一、知らなかったのがこの樋口さん(しかも隣のクラス)。大飯原発差止判決を聞くまで、こんな裁判官が同期にいたことを知らなかった私は、彼に合わせる:-)がないと思っていた。ところが、彼は初対面の私に向かって破顔一笑。?!?! 泰然自若、堂々としたものでした。
このとき、樋口さんは一生つきあえる人だと思いました。



3、三重県伊勢市
8月9日午前、三重県伊勢市の「小西バロックパールギャラリー」で、311当時福島に住み、その後三重県に移住した元宇宙飛行士の秋山豊寛さんら「2火会(ふかかい)」の皆さんとミニ学習会をしました。

この日、初対面の秋山さんからの突っ込みが強烈で、これほど活発に突っ込んでくる人は初めてでした。とても初めて会った人とは思えないほどの親近感を抱き、311まで福島で暮らし、その後、三重県に避難(移住)した秋山さんは、きっと、チェルノブイリ法日本版の隠れキリシタン会員だと思いました。

2022年7月21日木曜日

【第89話】追出し裁判で、福島県はいかなる法令に基づき、いかなる調査に基づき、いかなる論議を尽くして避難者の追出しを決定したのかを明らかにした主張書面を提出(その2)(2022.7.20)

                            (2021年5月14日 第1回期日 福島地裁前)

第88話】に続いて、 今度は、
福島県はいかなる法令に基づき、いかなる調査に基づき、いかなる論議を尽くして避難者の追出しを決定したのかを明らかにした主張書面の2通目。
それは、 国際人権法に基づく居住権のみならず、それ以外にも合計6つの理由で、被告(避難者)に対する福島県の明渡しの主張が根拠がないことを明らかにした、この裁判における被告主張を集大成した次の書面。

被告準備書面(15)--6つの抗弁の法律構成の骨子について--
 

以下その6つの理由の概要を紹介する。                

 

①.国際人権法に基づく居住権(直接適用)
 第1が、国際法の直接適用により、国内避難民である被告らには、国際人権法(社会権規約11条1項の「適切な住居」)が保障する居住権に基づき、本件建物を占有する権限が認められる。

②.国際人権法に基づく居住権(間接適用)
 第2が、国際法の間接適用により、国内避難民である被告らには、国際人権法(社会権規約11条1項の「適切な住居」)が保障する居住権に適合するように解釈された災害救助法及びその関連法令によれば、本件建物に占有する権限が認められる。

③.国家公務員宿舎の無償提供期間の延長打切りの違法性(その1)
 第3に、本来、国家公務員宿舎の無償提供期間の延長打切りは国が決定すべきものであった。にもかかわらず、本件では国の決定がなかった。従って、国家公務員宿舎の無償提供の延長打切りが有効適切になされていない以上、被告らの本件建物の占有権限は喪失したことにならない。

④.国家公務員宿舎の無償提供期間の延長打切りの違法性(その2:羈束行為)
第4に、仮に国家公務員宿舎の無償提供機関の延長打切りは2017年3月31日をもって区域外避難者に対する応急仮設住宅の供与を打切り、延長しないとした内堀福島県知事の決定によって手続的に有効だとしても、本件福島県知事決定は羈束行為であり、国際人権法(社会権規約11条1項の「適切な住居」)に適合するように解釈された災害救助法等に反するものであり、この点で違法を免れない。
 そして、本件福島県知事決定により原告からの延長要請がなかったことに基づいて、東京都は、被告らに対する本件建物の提供を2017年3月31日をもって打切り、延長しないことを決定したが、違法な本件福島県知事決定に基づいて一時使用許可を更新しなかった東京都の決定もまた過誤があり、違法を免れない。その結果、東京都と被告らの本件建物の使用関係も適法に終了したことにならず、被告らの本件建物の占有権限は喪失したことにならない。

⑤.国家公務員宿舎の無償提供期間の延長打切りの違法性(その3:法令の目的・趣旨に違反する裁量行為)
 仮に本件福島県知事決定に裁量判断の余地が認められるとしても、本件福島県知事決定が国際人権法に基づき国内法で保障される居住権を守らず、侵害することは法令の目的・趣旨に違反する裁量行為であって許されず、違法を免れない。
 その結果、上記と同様、違法な本件福島県知事決定に基づいて一時使用許可を更新しなかった東京都の決定も違法を免れず、東京都と被告らの本件建物の使用関係も適法に終了したことにならず、被告らの本件建物の占有権限は喪失したことにならない。

⑥.国家公務員宿舎の無償提供期間の延長打切りの違法性(その4:裁量行為の判断過程審査)
 仮に本件福島県知事決定に裁量判断の余地が認められるとしても、本件福島県知事決定の「判断過程」の以下の各局面において、
ⓐ.当該案件の構成要素となる事実を調査に基づき認定する過程
事実問題と法律問題に関し、いかなる調査を行い、その調査に基づいていかなる事実を認定したか、
ⓑ.基準(具体的裁量基準)の認定及び適用の過程
当該案件に適用すべき基準をいかに設定したか(考慮事項・考慮禁止事項など)、そして、その認定事実を基準に当てはめていかに評価したか
などを国際人権法その他の見地から個別具体的に検証した結果、上記「判断過程」の各局面において、看過し難い過誤が認められ、それらの過誤を総合判断した結果、本件福島県知事決定は裁量権の逸脱・濫用と言わざるを得ず、違法を免れない。
その結果、上記と同様、違法な本件福島県知事決定に基づいて一時使用許可を更新しなかった東京都の決定も違法を免れず、東京都と被告らの本件建物の使用関係も適法に終了したことにならず、被告らの本件建物の占有権限は喪失したことにならない。    


2022年7月20日水曜日

【第88話】追出し裁判で、福島県はいかなる法令に基づき、いかなる調査に基づき、いかなる論議を尽くして避難者の追出しを決定したのかを明らかにした主張書面を提出(その1)(2022.7.20)

                (2021年5月14日 第1回期日 福島地裁前)

第87話】に書いた通り、追出し裁判では、福島県の提訴以来ずっと、福島県は、自分たちが一体いかなる法令に基づいて、そしていかなる調査に基づいて、いかなる論議を尽くして、被告(避難者)の追出しを決定したのか、その決定のプロセスを決して明らかにしようとせず、
その結果、この核心部分がずっと闇の中に置かれてきた。

しかし、この間の関係者の尽力により、その闇が少しずつ明らかにされ、問題点がハッキリしてきた。

今回、被告(避難者)は、この闇に焦点を合わせ、この闇の解明こそが、追い出しの是非を決定する最重要論点であることを明らかにする2通の主張書面を作成した。
その1通目が、仮設住宅の支援打切りの適用法令及び決定の主体について主張した次の被告準備書面(14)。

被告準備書面(14)--仮設住宅の支援打切りの適用法令及び決定の主体について--

以下その内容を紹介する。

はじめに
 行政法の基本原則である「法律による行政の原理」及び「説明責任の原則」によれば、
原告は被告ら区域外避難者が入居する住宅の無償提供期間の延長及びその打切りを決定するにあたっては、いかなる法令に基づき、いかなる調査に基づいていかなる検討を経た上で政策決定したのか、その決定過程を当事者である被告ら区域外避難者に説明する責任がある。しかし、裁判以前は言うまでもなく、提訴に至っても、訴状には無償提供期間の延長及びその打切りの決定の根拠となった法令の説明は一言もなく、単に次の記述だけであった。
被告については平成29年3月31日をもって応急仮設住宅としての本件建物の供与が終了になり本件建物の占有権限がなくなった》(訴状の請求原因2(2))

これでは、葉っぱが秋になって色づいて落ちてなくなってしまったかのように、本件建物の供与も終了して占有権限もなくなってしまったと、あたかも自然現象であるかのように書かれていた。

 以上の通り、原告は自身に課せられた適用法令の説明責任すら果さない。その結果、被告らは当初適法に入居した自分たちがのちに追出される法的根拠すら知らされず、そのため、いかなる法令に基づき追出しの違法性を訴えたらよいのかという最も基本的な問題すら分からず、苦難を強いられた。本裁判の真相解明が最も困難を極めた最大の理由がここにある。

 しかるに、この間の関係者の尽力により、被告らは、ようやく本件建物の無償提供期間の延長及びその打切りの適用法令の糸口を掴んだ。それは被告らが、いかなる法令に基づいて本件追出しの違法性を反論したらよいかを掴んだという意味である。被告らの主張整理は今、クライマックスの中にある。それが本書面である。

第1、問題の所在
 本書面で検討する論点は次の3つである。
1、建設型応急仮設住宅の無償提供期間の延長及びその打切りの適用法令は何か。
2、国家公務員宿舎の無償提供期間の延長及びその打切りの適用法令は何か。
3、国家公務員宿舎の無償提供期間の延長及びその打切りの決定主体である行政庁はどこか。


第2、検討
1、論点1(建設型応急仮設住宅の場合の適用法令)
(1)、結論
 「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」(以下、特定非常災害特別措置法という)8条であって、災害救助法施行令3条2項ではない。
(2)、理由
 国は、2011年3月13日、福島原発事故を含む東日本大震災に対して、特定非常災害特別措置法に基づき、著しく異常で激甚な非常災害である「特定非常災害」に指定した 。
2012年4月17日、国が応急仮設住宅の供与期間を1年間延長するという通知(乙A24)を発出したのは特定非常災害特別措置法8条に基づいたもので、上記通知はこの法律に基づくことを明言している。
従って、建設型応急仮設住宅の場合、無償提供期間(供与期間)の延長の打切りの適用法令も同じく特定非常災害特別措置法8条である。   
 以上の通り、建設型応急仮設住宅について適用法令は明らかである。問題は建設型ではないが、応急仮設住宅の1つとされるみなし仮設住宅、その1つである国家公務員宿舎についての適用法令である。
以下、これについて検討する。

2、論点2(国家公務員宿舎の場合の適用法令)
(1)、結論
 国家公務員住宅の無償提供期間の延長及びその打切りの適用法令は建設型応急仮設住宅の場合と異なり、特定非常災害特別措置法8条でない。国家公務員住宅の無償提供期間の延長及びその打切りについて、特定非常災害特別措置法は「法の欠缺」状態にある。

(2)、理由
 特定非常災害特別措置法8条が建設型応急仮設住宅について、無償提供期間の更新の期間を1年間という短期間しか認めなかったのは、急ごしらえの建設型応急仮設住宅の安全面、防火面、衛生面を考慮せざるを得ないからで、それゆえ、更新の決定の行政主体も、建築基準法の建物を審査する特定行政庁とした。これには合理的な理由がある。

 しかし、そうだとすると、堅固な建物である国家公務員宿舎の場合に、更新の期間を同様に1年間という短期間しか認めないとする合理的な理由はない。 すなわち、堅固で、安全上も防火上も衛生上も基本的に問題のない建物である国家公務員宿舎の場合には建設型応急仮設住宅について定めた特定非常災害特別措置法8条を類推または拡張解釈する合理的な基礎がない。
よって、東日本大震災に対して適用される特定非常災害特別措置法は国家公務員宿舎の一時使用許可の期間及びその延長の期間については、これを決定する行政主体も含め、「現実の紛争事実に対して、法律から具体的な判断基準が直接引き出せない」という「法の欠缺」状態にある。

(3)、「法の欠缺」の補充           
 そこで、特定非常災害特別措置法の国家公務員宿舎の一時使用許可の期間及びその延長の期間、並びにその決定の行政主体について「法の欠缺」状態を補充(穴埋め)する必要がある。
まず、特定非常災害特別措置法の国家公務員宿舎の一時使用許可の期間及びその延長の期間について「法の欠缺」状態を補充(穴埋め)したのが準備書面(被告第2)第2、6(2)ウ(26~28頁)の記述である。 
次に、特定非常災害特別措置法の国家公務員宿舎の無償提供の期間の決定の行政主体について「法の欠缺」状態を補充(穴埋め)を検討したのが次の3、論点3である。     

3、論点3(国家公務員宿舎の場合の決定の行政主体)
(1)、結論
 国が決定主体であり、自治体の長ではない。

(2)、理由
 もともと特定非常災害特別措置法自体、全国の都道府県をまたぐほど広域にわたる過酷事故である原子力災害の発生を想定しておらず、そして、広域に及ぶ被害・避難が発生した福島原発事故に対して各自治体レベルで適切な対応をとるのは極めて困難な事情であることをかんがみれば、国家公務員宿舎の無償提供の期間(一時使用許可の期間及びその延長の期間)の決定についても、広域に及ぶ状況を把握している国をさしおいて他に適切な行政主体は見出し難い。
したがって、国家公務員宿舎の無償提供期間の延長の打切りもまた国が決定すべきである。

第3、結語
以上から、本件の国家公務員宿舎の無償提供期間の延長の打ち切りもまた国が決定すべきであった。
そのような国の決定がないまま延長を打ち切った本件はそれだけで重大な手続上の瑕疵であり、違法と言わざるを得ない。
 なお、以上は被告らの主位的主張であり、もしこれが認められない場合には予備的主張として、従前から主張している「災害救助法施行令3条2項に基づく福島県知事」が決定の行政主体であると主張するものである(その詳細は準備書面(被告第9)第2、3、(2)〔11~15頁〕参照)。
そして、この主位的主張と予備的主張についての主張整理は、今般提出の準備書面(被告第15)の中で明らかにした。
                                                        以 上



【第87話】緊急裁判速報:追出し裁判の福島地裁、次回期日(7月26日)で審理打切りを通告。避難先住宅ばかりか裁判所からも追出される避難者。これは居住権と裁判を受ける権利の二重の人権侵害である(2022.7.20)。

                (2021年5月14日 第1回期日 福島地裁前)

上の写真の通り、福島県が避難者に避難先建物の明渡しを求める裁判(避難者追出し裁判)が 昨年5月14日に福島地裁で第1回期日が開かれた(以下、その報告)。

 5.14世界の常識(国際人権法)でもって日本の非常識(避難者追出し)を裁く「避難者追出し訴訟」第1回口頭弁論の報告(2021.5.18) 

このときの被告(避難者)の主張は次の2点だった。
1、国難の責任者である国ではなく、福島県に原告の資格はない
国難である福島原発事故の救済に関する自主避難者の居住権の問題について、国の持ち物である国家公務員宿舎の明渡を、なぜ国難の責任者の国ではなく、なぜ国家公務員宿舎の持ち主の国ではなく、福島県が原告となって自主避難者を提訴できるのか、という原告適格の問題。

2、国際人権法に適合した法律の解釈をとれば、福島県の明渡し請求は認められない。
国内法の序列体系からすれば、国際法(条約)は法律の上位規範であり、本件に即して言えば、法律である災害救助法及びその関連法令の内容は国際法である国際人権法に矛盾抵触することはできず、これらの法律の内容は国際人権法に適合するように解釈されなければならない。
「国際人権法に適合した法律の解釈」――この基本原理を本件に当てはめれば、災害救助法及びその関連法令は「国内避難民となった原発事故被災者の居住権」を保障する社会権規約及びその内容を具体化、普遍化した一群の国際人権法に矛盾抵触することはできず、これらに適合するように解釈しなければならない。そこで、この国際人権法に忠実に災害救助法等を解釈すれば、原告の追出しの請求は認められないという結論が導かれる、という国際人権法の問題。

しかし、実はこの裁判では最大の謎が残っていた。それは、
福島県は一体いかなる法令に基づいて、そしていかなる調査に基づいて、いかなる論議を尽くして、
被告(避難者)の追出しを決定したのか、その決定のプロセスを決して明らかにしようとせず、闇の中に置かれてきたことである。

けれど、昨年の審理の中で、
被告(避難者)がこの点を追求する中で、少しずつ、福島県及び国の被告(避難者)の追出しの決定のプロセスが解明されてきた。

そこで、不完全とはいえこの間の解明を前提に、このたび、 被告(避難者)は初めて、本裁判で解明すべき中心争点を6つにまとめ、今後その真相解明を果すことを求める、この間の主張の集大成とも言うべき書面を作成、提出した。

被告準備書面(14)--仮設住宅の支援打切りの適用法令及び決定の主体について--

->その詳細は、【第88話】参照。

被告準備書面(15)--6つの抗弁の法律構成の骨子について--
->その6つの抗弁の詳細は、【第8】参照。

ここでようやく、本裁判は審理の夜明けに、本格的解明のとば口に立った。

ところが、その矢先に、裁判所は、昨日19日、次回で審理打切りを通告してきた。
これは臭いものに蓋をするという、被告
(避難者)の裁判を受ける権利の露骨な剥奪であり、被告(避難者)は国、福島県から迫害されるばかりか、人権の最後の砦とされる裁判所からも迫害されるという二重の人権侵害を受けている。

いま、世界は福島原発事故で避難を余儀なくされた避難者の人権侵害状況を憂慮し、国連人権理事会はその人権侵害状況の調査のため、セシリア・ヒメネス・ダマリー氏を特別報告者に任命し、その来日が確定している(9月26日~10月7日)。昨日の緊急裁判情報は、まるでダマリー特別報告者に、福島原発事故の国内避難民に対する迫害が日本政府のみならず、裁判所によっても実行されているという重大な事実を伝えるために行われたようなものである。

私たちは、もともと人権とは、原発事故が起きようが起きまいがそれに関係なく、誕生から死に至るまで一瞬たりとも途切れることなく、切れ目なく保障される生来の権利であり、
つまり、
原発事故が発生したからといって、被災者は一瞬たりとも人権を喪失することもなけれ、国家は人権保障を実行する義務を一瞬たりとも免れることもない。国家は途切れることなく、保障する義務を負い続ける。ここから避難者の救済を再定義し、本裁判でも主張してきた。

そうした基本的人権のエッセンスを踏まえた審理を実行するどころか、その実行にフタをすることだけに汲々とする福島地裁のやり方は、昨今の日本の常識だとしても、まぎれもなく世界の非常識である。
私たちは、避難者を追出そうと提訴した原告の福島県に対し、世界の常識(国際人権法)でもって日本の非常識(避難者追出し)を裁くという追求をしてきたのと同様、
追出し裁判の真相解明にフタをしようとする福島地裁に対しても、
世界の常識(国際人権法)でもって日本の非常識(真相解明にフタをして裁判を受ける権利を剥奪)を裁くという追求をする決意である。

次回の第8回裁判
日時:7月26日(火)午後1時30分(傍聴抽選券の配布は12時50分の予定)
場所:福島地方裁判所

当日の裁判前・後の集会の案内
 12時30分~12時45分 福島地裁前行動
 12時50分 傍聴抽選券配布
 13時30分~14時30分 第8回弁論 
 15時~16時 報告集会(参加費:無料)
 (福島市市民会館301号室(福島市霞町1番52号 福島地裁すぐ))


 


2022年6月14日火曜日

【第86話】5.18仙台高裁第3回子ども脱被ばく裁判の弁論の提出書面:明治以来の法学教育のエッセンス「拒絶法学」の最高峰「行政裁量論」への挑戦

  5月18日に仙台高裁で、子ども脱被ばく裁判の第3回口頭弁論が行われました。

当日(正式に提出扱いとなった)準備書面の主要なものと、その要旨陳述書面をアップします。

控訴人準備書面5(行政裁量論)

同書面の要旨

控訴人準備書面7(環境基準)

このうち、準備書面5は、実は、本年2月の前回の期日前に提出済みでしたが、その書面の冒頭に、
「本書面の記述は、控訴人らが考える行政裁量論の正しい適用の理想からみれば、今なお完成途上の不完全なものである。」
この程度が私たちの主張の全貌だなんて勘違いしない頂きたい、と偉そうに書いたのを裁判長に取り上げられて、
「未完成なようなので、完成したものを提出して下さい」
と完成を促されて、それで今回、再提出となったいわくつきのものです。

おかげで、この3ヶ月間、バージョンアップをする機会を与えられ、練り上げたのが今回提出の準備書面5です。

実は正直なところ、この書面を理解するのはかなり骨がおれます。
この書面のテーマが、「裁量」というものが認められる範囲内の行政庁の行為なら、行政庁が行った行為がどんなに不当だと言われようがそのために「違法」となることはなく、その結果、裁判所で責任追及されることもない、という「行政庁のお守り」みたいな「行政裁量論」に関するものだからです。

「行政裁量論」はおそらく、日本の裁判で問題となる法律問題のうちでも難問中の難問と言われるものです。

明治以来の日本の法学教育のエッセンスを「拒絶法学」(市民の要求を蹴っ飛ばすための法律の屁理屈)だと喝破したのは、戦前に自由法学を提唱した高名の民法学者末弘厳太郎ですが(以下の戒能道孝の講演参照)、
そのなかでも「行政裁量論」はこの「拒絶法学」の最高峰です。なぜなら、市民がいくら、その行政庁の行為は「違法」だと主張しても、いや、それは裁量の範囲内の行為だからとさえ言えば、それで市民の要求を蹴っ飛ばすことができるからです。

2018.12.22「チェルノブイリ法日本版学習会」のプレゼン資料112~114頁



しかし、市民の要求を蹴っ飛ばすための法律の屁理屈の最高峰が行政裁量論だとすれば、日本で市民の自己統治の社会を打ち立てるためには、どんなに困難でも、この屁理屈を蹴っ飛ばす「真っ当な理屈」を打ち立てることは避けて通れない課題です。
その無謀な試みが今回の準備書面5です。

2月に、裁判長が「ちゃんと完成したものを読みたい!」と言ってくれたんで、了解!と快諾したものの、「言うは易し、行い難し」だと内心、ヒーヒー言いながら、前人未到の議論を暗中模索してきました。
けれど、今回の行政裁量論の主張が成功しているかどうかを判定する人は、専門家ではなく、むしろ「市民の要求を蹴っ飛ばすための法律の屁理屈」でこれまでずっと苦しめられてきた私たち市民ひとりひとりです。

その積りで、裁判官だけではなく、傍聴する皆さんに理解してもらいたくて、裁判当日で読み上げる準備書面5の要旨を作成しました(そのPDFは->こちら)。

その要旨の当日の完成版もアップします(そのPDFは->こちら)。

私の今回の書面を作成した思いを、最後の結語のところにズバリ書きましたので参考までに、以下に転載します。

これが市民の自己統治の社会を打ち立てる上で、参考になれば幸いです。

          ***************

 第10、結語
 最後に2つのことを指摘しておきたい。
第1は、本書面に新たな事実の主張はない。全て原審で主張済みの事実ばかりである。それならなぜこれほど紙面を費やしたのか。ひとつにはそれは、原審で、控訴人らが血がにじむような努力をして、内部被ばく、低線量被ばくなど放射能の危険性を裏付ける事実・データを収集・主張して、放射能の危険性を証明しても、判決のゴール手前の所でこれら珠玉の事実・データがいとも軽々と無視され、無残に蹴散らされてしまうのを原判決で目撃したからである。その蹴散らす装置が行政裁量論である。控訴人らは福島原発事故の放射能の暴走を認めるわけにはいかないと同時に、原判決の行政裁量論の暴走も認めるわけにはいかない。そこで、何とか控訴人らが肯定できる「もう1つの行政裁量論」を提示し、その新たな判断枠組みの中に、これまで控訴人らが主張してきた重要な諸事実をもう一度当てはめて検討し直してみた時、原判決が示した世界とどれくらい違って見えるものか、実証したかったからである。

第2に、福島原発事故後に、行政裁量論が暴走したのは偶然ではなく、起きるべくして起きた理由がある。それは、福島原発事故で、未曾有のカタストロフィである福島原発事故に対応できるだけの「救済の法体系」が不在であることが判明したからである。あたり一面、ノールールの世界が出現した時、そこで、この真空地帯を埋めるのは行政庁の適切な裁量だと考えたのは原判決に限らない。だが、これは同時に行政権力の独走=暴走への道である。今日、行政裁量論に求められていることは個々の行政裁量の暴走に対する批判にとどまらず、行政裁量が暴走したくても暴走できないような構造的な判断枠組み作りである。この判断枠組みが適正に機能して行政裁量の暴走をストップできた時、行政裁量論の欺瞞を回避して正義に接近することが可能となる。そのとき初めて、我々の裁判は、内部被ばく、低線量被ばくなど放射能の危険性を裏付ける事実・データを正当に事実認定し、なおかつ正当に評価を与えることが可能となり、光学的欺瞞を回避して放射能の真実に接近できると信ずるものである。

2022年5月12日木曜日

【第85話】内堀福島県知事に対する「原発事故被害者政策に対する公開質問状」(2022.5.11)

はじめに

 311から11年目の今年3月11日に原発避難者が提訴した「原発避難者住まいの権利裁判」は、本来、人権とは原発事故が起きようが起きまいと、「誕生から死に至るまでどんなことがあろうとも、どこにいようとも一瞬たりとも途切れることなく、切れ目なく保障されるもの」であり、原発事故が発生したからといって、被災者は一瞬たりとも人権を喪失することもない。他方、国家も人権保障を実行する義務を一瞬たりとも免れることもなく、国家は途切れることなく、保障する義務を負い続ける--これが憲法の大原則なのに、
この大原則が311以来、すっかりどこかに忘れ去られているのではないか。その結果、福島原発事故から避難した避難者の居住権もまた、単なる行政からの恩恵にとどまり、 恩恵を施すのも終了するのもすべ行政の腹ひとつ、行政の考え次第でどうにでもなるものとして運用されてきたのではないか。もしそうなら、それは上の憲法の大原則に照らして根本的におかしいのではないか。
原発避難者住まいの権利裁判」はこの根本問題を正面から問う裁判です。
そこで、この裁判の中心テーマは、2017年3月末をもって応急仮設住宅の無償提供の打切りを決定した政策プロセスの真相解明、とりわけ災害救助法の建前からその決定権者とされる以下の内堀福島県知事の決断がいかなるものであったのか、その真相解明にあります(その詳細は->こちらを参照)。

                    日野行介「原発棄民」200頁より 
 

公開質問状 その全文のPDFは->こちら

この裁判の主役である内堀福島県知事に対し、本日、3つの市民団体が以下の公開質問状を提出しました。ここに示された質問は、ひとりこれらの市民団体にとっての課題にとどまらず、かつで誰も本気で想定していなかった福島原発事故を経験したわが国の住民全員が、好むと好まざるをかかわらず、背負うことになった宿命的な課題です。 是非とも、この問題に注視、注目して頂きたいと思います。







2022年3月12日土曜日

【第84話】3.11世界の常識(国際人権法)でもって日本の非常識(避難者追出し)を裁くもう1つの「原発避難者住まいの権利裁判」を提訴(2022.3.11)

はじめに

この国は戦後の新憲法制定により、人権の保障された国に生まれ変わりました。
ところで、人権とは個人の尊厳に由来し、人が人として生まれながらにして持つ権利であり、誕生から死に至るまで、どんなことがあろうとも、どこにいようとも、一瞬たりとも途切れることなく、切れ目なく保障されるものです。

つまり、
原発事故が起きようが起きまいと人権は切れ目なく保障されるものであり、原発事故が発生したからといって、被災者は一瞬たりとも人権を喪失することもなければ、他方、国家も人権保障を実行する義務を一瞬たりとも免れることもありません。国家は途切れることなく、保障する義務を負い続ける、これが憲法の帰結です。

ところが、
2011年の福島原発事故が発生して以来、日本政府は、この当たり前の原点を忘れたかのように、被災者に対し政府の指示通りに行動せよ、さもなければ応急仮設住宅の無償提供といった恩恵も施しもないぞと言わんばかりに、(勧告・推奨という体裁を取り繕っているものの、その実質は)上からの指示命令で被災者を取り扱ってきました。そこには、「人権とは誕生から死に至るまでどんなことがあろうとも、どこにいようとも一瞬たりとも途切れることなく、切れ目なく保障されるもの」という原理は忘れ去られたかのようでした。それは、子ども被災者支援法の運用に端的に示されているように、被災者に恩恵を施すのも終了するのもすべて政府の腹ひとつ、政府の考え次第でどうにでもなることでした。

その結果、
被災者は、政府の都合で、一方的に、政府が被災者に差し出した恩恵や施しの終了を宣言され、避難者の居住についても、やっと辿り着いた避難場所から追い立てられるという目に遭ったのです。その端的なケースが、東京の国家公務員宿舎に避難先として辿り着いた避難者に対し、そこから出て行けと追出しの裁判をかけられた「避難者追出し裁判」です。

しかし、
これは避難者を人権の主体と認めず、政府の都合次第でいかようにも扱われる、人権侵害行為ではないか。それならば、追出しの裁判をかけられる前に、避難者自らが行政を被告にして、避難者を行政の都合で避難先から追出すことを決めた決定が人権(居住権)侵害であり違法であるという判断を求めて提訴することにしたのです。それが3月11日、11名の避難者による「住まいの権利裁判」の提訴です。

提訴・提訴後の報告集会の写真と動画


動画 UPLAN 原発事故避難者住まいの権利裁判提訴と提訴報告集会


奇々怪々の裁判 
  以下が、提訴した訴状と証拠一式です。

訴状     ->PDF
訴状の要旨 ->PDF
証拠一式の証拠説明書
  甲A関係(応急仮設住宅供与の事実経緯)     ->PDF
  甲B関係(国際人権法)                 ->PDF
  甲C関係(放射能の汚染状況、人体への影響等) ->PDF

訴状を見てあれっと思うのが、行政が起した「避難者追出し裁判」といい、避難者が起した「住まいの権利裁判」といい、避難者の追出す行政の主体が福島県だということです。
けれど、
東京東雲の国家公務員宿舎の持ち主は国であって、福島県ではありません。建物の持ち主でもない福島県がなぜ明渡せという裁判を起せるのか、誰が考えてもおかしい。
また、
東京東雲の国家公務員宿舎を避難者に提供したのは東京都であって、福島県ではありません。建物の提供者でもない福島県がなぜ明渡せという裁判を起せるのか、誰が考えてもおかしい。

その理由はこうです。
被災者の救済を具体的に決める行政の主体は、被災県の首長だと、本件なら福島県知事だと災害救助法で定めてある(3条)。
そして、
内堀福島県知事は2015年6月15日、2017年(平成29年)3月31日をもって区域外避難者に対する応急仮設住宅の供与を打切り、延長しないという重大な決断を下した(以下がその時の記者会見)。


                    日野行介「原発棄民」200頁より

つまり、2017年3月末をもって応急仮設住宅の無償提供を打ち切り、避難者を追出すと決めたのは福島県知事なんだから、福島県がその尻の始末もしろ、と。

今回の裁判のテーマ
そういう理屈であれば、この2015年6月15日の内堀福島県知事の決定こそ、そのあとの避難者追出し行為の原点となった諸悪の根源であるから、この「住まいの権利裁判」でも、この福島県知事決定の違法性を、それが決定されるプロセスのすべての局面にわたって、人権侵害など看過し難い誤りをおかしていないか、徹底的な事案解明を求めたい、これが訴状の内なる声です。
これを具体的に示すと、次の通りです。

世界の常識である国際人権法の自覚
311後でハッキリしたことの1つが、「世界の常識が日本の非常識」であり、「日本の常識が世界の非常識」だということです。その姿が「避難者追出し裁判」でも「住まいの権利裁判」でも反映しています。
だからこそ、
私たちはこの歪みをただし、「世界の常識が日本の常識」であり「日本の常識が世界の常識」となることをめざして、訴状の中で、福島県の避難者追出し行為は国際人権法が「国内避難民に認める居住権」という人権を侵害するもので、世界の常識からみたら到底通用するものではないことを正面から掲げました。

日本の非常識である行政裁量論の暴走のストップ
他方で、
これまで、行政はことあるたびに、自分たちの政策決定を、行政裁量(一定の範囲で行政庁に自由な判断を認め、その限りで違法とはならない)の適切な行使だと言って、正当化してきました。しかし、たとえ行政裁量を認める余地があるとしても、その判断が人権侵害など不適切な行使に及ぶ場合には、それは許されず、違法を免れないことは当然です。その点を明確にして、この裁判でも、裁量の名の下に、行政の横暴、独走を見過ごさないことを訴状のテーマに掲げました。  

原発事故救済に関する全面的なノールール(無法状態)の抜本的解決
さらに、
311まで日本政府は原発事故の発生を想定していなかった。だから、原発事故が発生したあとの具体的な救済は何も定めていなかった。これが原発事故救済に関する全面的なノールール(無法状態)です。
実は、半世紀前にも同じ問題が起きました。それが公害です。この日本に深刻な公害が見舞った時、時の佐藤栄作自民党政権は、公害の救済に関する全面的な無法状態に対し、公害対策基本法から「経済の健全な発展との調和が図られるようにする」という調和条項を削り、命・健康の擁護を最優先とする姿勢に大転換する法改正を行い、さらに水質汚濁防止法の制定など公害問題に関する14の法令を矢継ぎ早に制定して、立法的に無法状態を解決しました(1970年の公害国会)。しかし、311後の日本政府は、半世紀前のこの教訓から学ばず、原発事故救済に関する全面的な無法状態に対し立法的な解決を図らず、野放しにした。今、そのツケが避難者の上から人権侵害と見舞っている。であれば、この裁判でも、この問題を取り上げざるを得ない。それが、立法的解決に代わる司法的解決です。

抜本的な司法的解決の導きの星は米沢が生んだ民法の神様「我妻栄」
立法的解決に代わる司法的解決というのは、
原発事故救済に関する無法という穴だらけの状態を法律の解釈によってその穴埋めをすることです。私たちにはそのためのモデルがあります。百年前、米沢が生んだわが国最高の法学者であり、民法の神様とうたわれ、長く民法学の中心的存在だった我妻栄が唱え、終生の課題とした法律解釈の次の方法論です。
社会事情の著しき変遷に対し現時の新しい倫理観念に適合した法律の解釈はいかにして可能であるか」です(1926年「私法の方法論に関する一考察」)。

       (いずれも、ジュリスト臨時増刊1974年6月21日号「特集我妻法学の足跡」より)

我妻の教えを本裁判に適用すると、
原発事故という未曾有の大災害に対し、国際人権法に適合する法律(災害救助法等)の解釈はいかにして可能であるか」です。

この問題を訴状でも、我妻が取り組んだ法律解釈の方法論の原点に立ち戻り、「新しい酒は新しい革袋に盛れ」に従って、311が私たちに示した新しい酒(原発事故の救済)」に相応しい「新しい革袋(法解釈)」に盛ることを、この裁判の中心テーマにしたのです。


それが以下の訴状目次です。

                    目 次
第1、本件裁判の概要                                3頁
第2、原発事故の救済に関する全面的な「法の欠缺」状態の発生    
 1、はじめに――原発事故救済に関する法律の再建の必要性――      9頁
2、311までの法律の現状(災害救助法等のノールール)               10頁
 3、311以後も災害救助法等の「法の欠缺」状態                        11頁
 4、小括――「法の欠缺」状態の解消を図る司法的解決――            11頁
第3、311後の原発事故救済に関する法律の解釈の再構成         
 1、再構成のための「法解釈」の方法論                                   11頁
2、法律の対象となる「社会現象」の探求                         
  (1)、はじめに                                                              12頁
 (2)、放射線被ばくによる健康被害の時間的影響について丸山真男の証言 13頁
 (3)、チェルノブイリ事故による健康影響についての2つの証言           13頁
 (4)、福島原発事故がもたらす放射能汚染及び健康被害の影響が時間的にも類例を見ないほど長期にわたり深刻なものであること                                14頁
3、法律によって実現すべき「理想」(指導原理)の探求 
 (1)、国内法の理想(指導原理)                                             26頁
 (2)、国際人権法の理想(指導原理)          
  ア、国際人権法の登場                                                  27頁
  イ、難民に関する国際人権法の理想(指導原理)                       27頁
  ウ、国際人権法に登場した居住権の理想(指導原理)
   (ア)、居住権に関する国際人権法の沿革及び概要                      28頁 
   (イ)、社会権規約に登場した国際人権法の理想(指導原理)           28頁
   (ウ)、一般的意見第4に登場した国際人権法の理想(指導原理)      29頁
   (エ)、一般的意見第7に登場した国際人権法の理想(指導原理)       31頁
   (オ)、国内避難民に関する国際人権法の理想(指導原理)              33頁
   (カ)、社会権規約委員会作成の「総括所見」に登場した国際人権法の理想(指導原理)                                                                     36頁
4、社会現象を法律の理想に従った「法律構成」の探求(総論)
 (1)、序列論                                                                 38頁
 (2)、条約の解釈の方法                                                      38頁
 (3)、上記(1)及び(2)の基本的立場の帰結                                   38頁
 (4)、全面的な「法の欠缺」という本件に特有事情からの帰結        39頁 
5、社会現象を法律の理想に従った「法律構成」の探求(各論1)
 (1)、はじめに                                       42頁
 (2)、住居への入居(アクセス)                                              42頁
 (3)、入居した住居への継続的居住                                         42頁
 (4)、入居した住居からの強制退去                                          42頁
6、社会現象を法律の理想に従った「法律構成」の探求(各論2)
 (1)、はじめに                                                                43頁
 (2)、区域外避難者に対する住宅支援の提供及び打切りの法的枠組み    44頁 
 (3)、区域外避難者に対する住宅支援の打切りに関する法令の再構成
ア、区域外避難者に対する住宅支援の打ち切りに関する法令            45頁
イ、災害救助法施行令第3条第2項等の趣旨                              46頁
ウ、災害救助法施行令第3条第2項等の再構成                           47頁 
(4)、小括                                                                      48頁
第4、被告の公務員による違法行為1(本件福島県知事決定)
 1、はじめに                                                                49頁
2、再構成された法令に基づく本件の検討                                 49頁
3、被告からの反論「原告らは現在も「国内避難民」か」                  50頁
4、小括                                                                       51頁
第5、行政裁量論の概要
1、    はじめに――被告に残された反論の可能性――                      51頁          
2、    311後に出現した新たな論点と行政裁量論者の重大な見落とし    51頁
3、行政裁量論の正しい吟味――2つの論点(①裁量の有無と②裁量の違法)の検討――                                                                       52頁
第6、行政裁量論の第1の論点(裁量の有無)
1、    第1の論点「裁量の有無」の検討(一般論)                           53頁
2、    第1の論点「裁量の有無」の検討(本件)                             53頁
3、本件福島県知事決定の検討(法の趣旨に反し違法か否か)            54頁
第7、仮定主張:行政裁量論の第2の論点(裁量の逸脱濫用の有無)
1、第2の論点「裁量の逸脱濫用の有無」の検討(一般論)         
 (1)、はじめに                                                               55頁
(2)、行政庁の「判断過程」                                                  56頁
(3)、行政庁の「判断過程」の各局面における検討                        57頁
2、第2の論点「裁量の逸脱濫用の有無」の検討(本件)
  (1)、結論                                                                 59頁
(2)、理由(福島県知事の「判断過程」における看過し難い過誤)         63頁  
 3、小括                                                                     66頁  
第8、被告の公務員による違法行為2(その他)
 1、はじめに                                                                 66頁
 2、「復興公営住宅」の避難先での建設のサボタージュ                   66頁
 3、県に住む親族に原告の立退きを求める行為に出たこと               68頁 
 4、小括                                                                     68頁
第9、精神的苦痛による損害                                                 69頁
第10.結語                                                                    70頁
        


【第171話】最高裁にツバを吐かず、花を盛った避難者追出し裁判12.18最高裁要請行動&追加提出した上告の補充書と上告人らのメッセージ、ブックレット「わたしたちは見ている」(24.12.20)

1、これまでの経緯 2011年に福島県の強制避難区域外から東京東雲の国家公務員宿舎に避難した自主避難者ーーその人たちは国際法上「国内避難民」と呼ばれるーーに対して、2020年3月、福島県は彼らに提供した宿舎から出て行けと明渡しを求める裁判を起こした。通称、避難者追出し訴訟。 それ...