2023年11月11日の第19回目の脱被ばく実現ネットの新宿デモは来月12月18日に控訴審判決が出る子ども脱被ばく裁判を支援するためのものだった。 以下は、そのデモ前スピーチのラストに喋った原稿に一部加筆したもの。ですます調をだである調に変更してある。
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今日、私が話したいことはマスコミの報道しないテーマ「国際人権法が311後の日本社会を変える」ことです。
1、311福島原発事故で、日本政府は敗戦を迎えました。なぜなら、それまで日本政府は日本ではチェルノブイリ事故のような原発事故は起きないと考え、いわば原発事故に勝てると公言していた。しかし、311で勝てなかったことが判明した。その意味で、これは敗戦です。その結果、この敗戦で、当然、敗戦(原発事故)の責任が問われることになるはずだった。しかし、311直後の日本政府の唯一最大の目標は、国体護持(自己保身)、すなわちこの敗戦(原発事故)の戦争責任を回避し、不問に付すことだった。「原発事故は起きない」と豪語していた311前の振舞いを猛省するのではなく、この振舞いに一点も言及することなく、「原発事故は起きたけれど、起きてもたいしたことはない。健康被害も無視してもいいくらい問題ない。だから、311前の振舞いも別に問題なかったのだ」と原発事故で迷惑をかけた人々に対し何らの責任を取らない、この無責任体制=全面的な開き直りの態度に出た。
この態度が311後の日本政府の根本的な姿勢であり、そこに根本的な誤りがあった。
そして、これが根本である以上、この姿勢は各論の個別の問題でも貫徹されざるを得ない。
そのひとつが、避難者追出し裁判でも、無理やり避難者を仮設住宅から追出し、彼らの存在を消し去る必要があり、
また、小児甲状腺がん患者に対し、無理やり、被ばくとの因果関係を否定して、健康被害の実相にフタをする必要があった。
これらの異常な事態はすべて、根本の病巣である「福島ファシズムの支配と服従の構造」から派生する個別の吹き出物、おできのようなものだった。
この根幹の問題である福島ファシズムの違法性を真正面から問うたのが子ども脱被ばく裁判だった。こんな裁判はほかにはなかった。
2、今週月曜日に、最高裁に1通の書面を提出した。それは福島が起こした避難者を仮設住宅から追出す裁判で、仙台高裁の裁判官の訴訟指揮があまりにひどいので、裁判官を辞めさせてくれと忌避申立した事件の書面「特別抗告申立理由書」(全文はー>こちら)だった。
私はこれを書いて、これがもし将棋の世界だったら、藤井八冠のように完全に詰んだと確信した。その理由はつい3週間前、先月25日に出た最高裁大法廷の決定を読んだからだ(全文はー>こちら)。
この最高裁決定とは何か。それは令和の黒船だ。これで日本が引っくり返るからだ。この最高裁の決定は、性同一性の不一致で苦しんでいる人たちの問題を「これは天災、自然災害ではない、人間がもたらした人災だ」ととらえ、その人災を国際人権法の正義の眼から見て許されないと判断したものだ。
だとしたら、これは福島原発事故と同じではないか。福島原発事故で苦しんでいる人たちの問題を「これは単なる天災、自然災害ではない、人間がもたらした人災だ」ととらえ、日本政府や福島県の政策を国際人権法の正義の眼から見て裁く必要がある。
それを真正面から問うた裁判が問うたのが来月判決のある子ども脱被ばく裁判の控訴審だ。
3、もともと法律には「下位の法令は上位の法令に従い、これに適合する必要がある」という掟がある(※)。例えば、交通規制の法律で「車は左側通行」と決めたら、その下位の法令は全てこれに従って定められる。それが守られなかったら法体系は秩序が保たれず、機能しない。当然の掟だ。
(※)この掟のことを序列論あるいは上位規範(国際人権法)適合解釈と言う。
先月25日に出た最高裁大法廷の決定もこの当然の掟に従ったまでのことだ。ただし、今回、法律の上位の法令として「国際人権法」があることを正面から認めた。日本で国際人権法が法律の上位の法令であるなんて今さら言うまでもない。その当たり前のことを、今やっと初めて認めた。
重要なことは、最高裁がこの大法廷決定で使ってしまったカード、
「日本の法令は国際人権法に適合するように解釈しなければならない」
という原理が性同一性の法令と事件だけにとどまらないということだ。法規範は普遍的な性格を持つ。あな恐ろしや、ここが法律の恐ろしいところで、この上位規範(国際人権法)適合解釈という原理は、それ以外の法令にも、またそれ以外の事件にも適用される。その結果、どういうことになるか。
第1に、この原理により、日本のあらゆる法令を国際人権法の観点から再解釈されることになる。これを本気で検討したらどういうことになるか。それまで鎖国状態の中にあった日本の法令は、幕末の黒船到来以来の「文明開化」に負けない「国際人権法化」にさらされ、すっかり塗り替えられるだろう。
第2に、この原理は福島原発事故関連の全ての裁判に適用される。これを本気で検討したらどういうことになるか。その時、福島原発事故関連の全ての裁判のこれまでの判決はみんなひっくり返る可能性がある。そして、これから出る判決もこの原理に従えば必ず勝てる。
4、だから、この最高裁決定は、311以来、日本を覆っている福島ファシズムを打破する令和の黒船だ。311直後に「ピンチはチャンス」と言った人物がいたが、この言葉は今日のこの日のためにこそある。最高裁決定という黒船の到来を合図に、最高裁もついに認めた世界の良識=国際人権法を使って、私たちの社会を福島ファシズムから解放する最大のチャンスにしようではありませんか。今日のデモはそのための最初の一歩になるものと信じて疑いません。ともに頑張りしょう。
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