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2023年8月12日土曜日

【114話】自由研究(3):311後の法秩序のモデルはナチスの独裁国家体制=全権委任法、但し、それは「法の欠缺」を最大限悪用した(2023.8.11)。

           (ウィキペディアより)
1933年3月23日、議場で全権委任法への賛成を要求するアドルフ・ヒトラー

自由研究(1)のラストに以下に次のように書いた。これがその別便。

以上、つい長くなったので、311後の日本の独裁的な法体制がナチスの独裁国家体制に匹敵すると考えた理由については別便で書きます。
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先月下旬、NHKで放送された、
映像の世紀バタフライエフェクト 「ヒトラーVSチャップリン 終わりなき闘い」
 を観て、チャップリンという「理念の光」を当てることで、権力犯罪者のヒトラーの面目がかつてないほどにリアルに迫ってきた経験をしました。それで、改めて、ヒトラーの独裁権力掌握へのプロセスについて思いを致す中で、311後の日本の独裁国家の法秩序はヒトラーから学んでいるのではないかという仮説を想到するに至りました。それが以下。

前年1932年7月の総選挙で第一党となったナチ党は、しかし過半数に及ばない、3分の1強の議席数にとどまったが、紆余曲折の末、1933年1月、ヒトラー内閣が成立。この時、保守派は「われわれはヒトラーを雇ったのだ」とヒトラーを確実に封じ込めると踏んで、この『ボヘミアの伍長』と妥協した。しかし、『ボヘミアの伍長』は保守派の数枚も上手を行った。
同年2月に国会議事堂が放火されるという事件が勃発したとき、過激派の単独犯行とみられたのを、ナチ党はこれを共産党による組織的暴動とみなし、国会と地方の3000人以上の共産党員・ドイツ社会民主党員を逮捕・拘束した。
その翌月3月、ヒトラーは、保守派閣僚によるヒトラー内閣の囲い込み状態を突破するため総選挙をおこない、財界からの協力を取り付けて得た圧倒的な資金力と国家権力を駆使した大規模な選挙運動を展開し、結果は196から288議席となったものの、それでも過半数に届かない44%弱だったが、連立相手である国家人民党と合わせて54%の過半数を確保した。そこで、この選挙結果を足がかりに、一気に独裁国家体制の法秩序の形成に打って出たのが、全権委任法の成立。
その顛末は以下に書かれていますが、
https://onl.tw/ifNsZ9r

全権委任法は全部でたった5条の法律で、それは理念法などではなく、明確に、
憲法に違反することすらできる無制限の立法権をヒトラー率いるドイツ政府に授ける
と書かれたものでした。
この結果、ヒトラー政府は国会に代わって立法を行い、なおかつこの政府の立法権は憲法に優越しうること(憲法に反すること)が可能となりました。ここから破滅的な第二次世界大戦に向うのは時間の問題でした。
このとき、ヒトラーは、議会制民主主義を使って、議会制民主主義を否定する独裁国家の法秩序を作ることに成功したのです。

そして、実はこれと同じ結果が311後の日本でも実現したのではないか。これが私の仮説です。
そのきっかけが、311後に判明した、原発事故の救済に関する全面的な「法の穴」状態の発生です。
半世紀前の日本であったなら、この当時、公害災害の救済に関する全面的な「法の穴」状態に直面していた私たちは、歴史的な公害国会を通じて、矢継ぎ早に新たな立法或いは抜本的な法改正という「立法的解決」によって全面的な「法の穴」状態を解消したのですが、
311後はそんな健全な真っ当な取組みは何一つ、全くやらないで来た。
その結果発生した、原発事故の救済に関する全面的な「法の穴」状態は、子ども脱被ばく裁判の福島地裁判決がいみじくも下したように、
行政庁の処置について、法令の具体的な定めがないが、そこでは行政庁の適切な裁量または専門的かつ合理的な裁量に委ねられているというべきである
と政府に全権委任する道を取ることが宣言されたのです。その結果、原発事故によって、どれだけ無数の人たちが無念の命を落とし、健康を害し、生活を崩壊させられたとしても、それらの人権侵害はすべて無視され、このやり方でもって蹴散らされることになったのです。
このやり方は憲法が保障する人権の蹂躙であり、憲法の否定です。
こうした憲法に反した人権蹂躙が、行政裁量の名の下で次々と行われているーーこれが311後の日本の法秩序の現実です。

他方、自ら積極的に、このような法秩序を白昼、堂々と宣言してみせたのがナチスの全権委任法だとしたら、福島原発事故を契機に判明した全面的な「法の穴」状態に目をつけて、こっそりこれを最大限悪用して、誰も知らない間に、ナチスの全権委任法と同様の行政の独裁行為を正当化してみせたのが311後の日本の法秩序ではないか。
裏からコソコソ、独裁国家体制を仕立て上げるところが、第二次世界大戦時の日本政府と同様、日本的でいかにも姑息、陰険、陰湿な権力犯罪者のやり方かもしれませんが、やり方は裏からコソコソであれどうであれ、その結果、犠牲を被り、涙を流すのはいつも決まって私たち市民です。

以上、自由研究(1)の補足です。

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