【第88話】に続いて、
今度は、
福島県はいかなる法令に基づき、いかなる調査に基づき、いかなる論議を尽くして避難者の追出しを決定したのかを明らかにした主張書面の2通目。
それは、 国際人権法に基づく居住権のみならず、それ以外にも合計6つの理由で、被告(避難者)に対する福島県の明渡しの主張が根拠がないことを明らかにした、この裁判における被告主張を集大成した次の書面。
◆被告準備書面(15)--6つの抗弁の法律構成の骨子について--
以下、その6つの理由の概要を紹介する。
①.国際人権法に基づく居住権(直接適用)
第1が、国際法の直接適用により、国内避難民である被告らには、国際人権法(社会権規約11条1項の「適切な住居」)が保障する居住権に基づき、本件建物を占有する権限が認められる。
②.国際人権法に基づく居住権(間接適用)
第2が、国際法の間接適用により、国内避難民である被告らには、国際人権法(社会権規約11条1項の「適切な住居」)が保障する居住権に適合するように解釈された災害救助法及びその関連法令によれば、本件建物に占有する権限が認められる。
③.国家公務員宿舎の無償提供期間の延長打切りの違法性(その1)
第3に、本来、国家公務員宿舎の無償提供期間の延長打切りは国が決定すべきものであった。にもかかわらず、本件では国の決定がなかった。従って、国家公務員宿舎の無償提供の延長打切りが有効適切になされていない以上、被告らの本件建物の占有権限は喪失したことにならない。
④.国家公務員宿舎の無償提供期間の延長打切りの違法性(その2:羈束行為)
第4に、仮に国家公務員宿舎の無償提供機関の延長打切りは2017年3月31日をもって区域外避難者に対する応急仮設住宅の供与を打切り、延長しないとした内堀福島県知事の決定によって手続的に有効だとしても、本件福島県知事決定は羈束行為であり、国際人権法(社会権規約11条1項の「適切な住居」)に適合するように解釈された災害救助法等に反するものであり、この点で違法を免れない。
そして、本件福島県知事決定により原告からの延長要請がなかったことに基づいて、東京都は、被告らに対する本件建物の提供を2017年3月31日をもって打切り、延長しないことを決定したが、違法な本件福島県知事決定に基づいて一時使用許可を更新しなかった東京都の決定もまた過誤があり、違法を免れない。その結果、東京都と被告らの本件建物の使用関係も適法に終了したことにならず、被告らの本件建物の占有権限は喪失したことにならない。
⑤.国家公務員宿舎の無償提供期間の延長打切りの違法性(その3:法令の目的・趣旨に違反する裁量行為)
仮に本件福島県知事決定に裁量判断の余地が認められるとしても、本件福島県知事決定が国際人権法に基づき国内法で保障される居住権を守らず、侵害することは法令の目的・趣旨に違反する裁量行為であって許されず、違法を免れない。
その結果、上記④と同様、違法な本件福島県知事決定に基づいて一時使用許可を更新しなかった東京都の決定も違法を免れず、東京都と被告らの本件建物の使用関係も適法に終了したことにならず、被告らの本件建物の占有権限は喪失したことにならない。
⑥.国家公務員宿舎の無償提供期間の延長打切りの違法性(その4:裁量行為の判断過程審査)
仮に本件福島県知事決定に裁量判断の余地が認められるとしても、本件福島県知事決定の「判断過程」の以下の各局面において、
ⓐ.当該案件の構成要素となる事実を調査に基づき認定する過程
事実問題と法律問題に関し、いかなる調査を行い、その調査に基づいていかなる事実を認定したか、
ⓑ.基準(具体的裁量基準)の認定及び適用の過程
当該案件に適用すべき基準をいかに設定したか(考慮事項・考慮禁止事項など)、そして、その認定事実を基準に当てはめていかに評価したか
などを国際人権法その他の見地から個別具体的に検証した結果、上記「判断過程」の各局面において、看過し難い過誤が認められ、それらの過誤を総合判断した結果、本件福島県知事決定は裁量権の逸脱・濫用と言わざるを得ず、違法を免れない。
その結果、上記④と同様、違法な本件福島県知事決定に基づいて一時使用許可を更新しなかった東京都の決定も違法を免れず、東京都と被告らの本件建物の使用関係も適法に終了したことにならず、被告らの本件建物の占有権限は喪失したことにならない。